介護サービス情報の公表がもたらすもの

このブログでも何度か取り上げている介護サービス情報の公表に関して、
こういった記事が掲載されていました。

介護事業者情報のネット公表始まる

 国は、介護サービスに関する情報の公表を、本年度からサービス提供事業所に義務づけた。一部の県では、インターネットを使った情報の公表が始まっている。使い勝手などを検証してみた。 (佐橋大)
 制度によれば、各都道府県に設けられた「情報公表センター」が、事業所から毎年情報を集め、インターネットで公表する。
 どんな資格を持った職員が何人いるか、サービスの提供時間は何時から何時か、利用マニュアルはあるか、月額利用料はいくらか-といった項目を公表する。公表が義務づけられる事業所は、最初は、訪問介護、福祉用具貸与、居宅介護支援など九種。来年度以降、新たに訪問リハビリなどが対象になる。
 これまで利用者や家族は、サービス内容を比較できるだけの情報を得にくく「知っている施設だから」「ケアマネジャーに勧められたから」といった理由で、選びがちだった。インターネットで事業所を比較し、よりよいものを選ぶようになれば純粋なサービスの競争に変わり、サービス向上につながる、というのが同制度の狙いだ。
 「判断材料があれば、別の事業所を選んでいたと思う」と話すのは、四十代女性・加藤さん(仮名)。
 全国に先駆け六月に開設した愛媛県の情報公表のホームページを、加藤さんに見てもらった。
 サービス内容と所在地の両方から事業所を検索でき「常にチェックできるようにすることは、いいこと」と評価する一方、「私たちより年配の人がインターネットを使いこなせるだろうか」と疑問も。内容についても「介護について何も知らない人が、この情報から判断するのは難しい」と感じた。
 情報は「マニュアルがあるかないか」などの形式的な事実だけで、マニュアルに基づくサービスの満足度や、職員の人柄までは分からない。サービスの良しあしを判断するには、豊富な知識と経験が求められそうだ。
 情報の更新は年一回で、公表されている情報が現状と異なる可能性も。「結局、直接聞いてみなければ本当のところは分からない」となっては、何のための制度か分からなくなる。公表の方法はインターネットだけでは不十分と考える県が多く、紙に印刷した情報を役所に置くことを依頼しているところもある。
 服部万里子・城西国際大教授は「新制度は利用者のためにならない」と話す。一サービスにつき年間五万円前後かかる調査・公表の費用は原則、規模の大小を問わず事業者の負担。小規模な事業所ほど、負担が重くなる。小さな事業者が撤退を迫られ、サービスの選択肢が減少すれば、結果的に、利用者にはマイナス-そんな可能性を服部教授は考えている。
 三重県四日市市で通所介護など五種類のサービスを提供する中部介護支援センターが公表に伴う手数料を計算すると、年間約二十三万円となった。もともと経営は採算ラインぎりぎり。斎藤則子所長は「サービス向上のためなら、研修にもっとお金をかけた方がいいのでは」と疑問を呈する。
 厚生労働省は「公表にかかる経費は、四月に改定された介護報酬に盛り込まれており、手数料は事業者の負担にならない」と説明する。ただ、介護報酬も介護保険料など被保険者の負担で成り立っていることを、心に留めておきたい。

この制度に関しては、開始以前からさまざまな問題点が指摘され、
批判も多かったのですが、それが現実のものとなってきています。
特に反発の強かったのは当然、公表のための調査費用などを負担する介護事業者でしたが、
それだけではなく、
情報を閲覧する利用者や、情報公表を行う情報公表センターにとっても、
この制度の意義というものには首をかしげているような現状。
理想としては、
公表されている情報を、利用者側が把握し、
そこからサービスを選択できる消費者としての目が養われることに間違いありません。
最近ではスーパーに並ぶ生鮮食品にも産地や種類などの情報が詳細に記載されることが多くなっています。
それは、消費者が購買活動を行う際、
商品を選択をするための情報を持っているから意味を持ちます。
言い換えると、
商品そのものの情報と、消費者が選択するために持っている情報とが結びついてこそ意味を持ちます。
介護消費者も消費者として成長することが望まれますが、
それにはまだまだ越えなければいけないハードルがあるということですね。

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