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介護保険証、マイナンバーカードに一体化
ついに来ましたね、マイナ介護保険証。将来的には紙の介護保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針となります。詳しくは記事を読んでいただければと思いますが、
えっ!2024年度って今年度じゃん。
・・・そんな無茶な。
いわゆるオンライン資格確認システムに、介護保険も含まれるということです。
下の図で見るとわかる通り、国は医療情報プラットフォームを通して、資格確認情報が介護情報データベース(仮称)として蓄積され、科学的介護情報システム(LIFE)やケアプランデータ連携システムと結びついていきます。要は介護・医療に関する個人情報を一元管理する狙いです。
厚生労働省|全国医療情報プラットフォームの全体像(イメージ)(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001144379.pdf)
予定されていたこととはいえ、ちょっと、急すぎますね。
介護保険情報をどう確認すべきか
介護保険事業者がまず真っ先に考えることは、介護保険情報の確認をどうするか、です。
ご存じの通り、すでに医療保険のマイナンバーカード導入は先に進んでいます。いわゆるマイナ保険証です。
訪問看護の事業所でもマイナンバーカードから医療保険情報を確認するための機器が必要です。
カード情報の読み取りというと、カードリーダーでスキャンすることをイメージする方が多いと思います。
今は、スマートフォンでマイナポータルのアプリを導入し、オンライン資格認証のシステムを通してスマートフォンからスキャンができるそうです。
詳しくはこの動画がわかりやすかったので。
ただし、問題点もいくつかありますので、紹介します。
認証には4桁の暗証番号が必要
マイナンバーカードには4桁の暗証番号があります。
利用者のマイナンバーカードは、その暗証番号を入力しないと認証ができません。
そこで問題です。利用者は自分のマイナンバーカードの4桁の暗証番号を覚えているのでしょうか。
独居だったら?認知症だったら?
いろいろな疑問が起きます。暗証番号をどうやって聞き出すか。どうやって調べるか。
いや、これは絶対無理やろ、と。そう思ったみなさんが多分正しい。
認証番号がわからずに介護保険情報を確認できないケアマネが続出する可能性が大です。
閲覧できる情報の制限
マイナンバーカードの介護保険情報、訪問先ですべての情報が閲覧できるとは限りません。
医療保険を例にすると、医療保険情報のうち、訪問先で確認できるのは以下の3点のみとのことでした。
- 氏名
- 資格の有無
- 負担割合情報
むむっ。それだけか。
その他の保険情報は医療機関内のシステムで入手ができるようになっています。
たとえば、被保険者番号や性別・生年月日・住所、区分、保険の有効期間、保険者など、詳細な情報は医療機関内の端末からでないとアクセスができないそうです。
となると・・・
ケアマネは訪問先で介護度の確認もできないのか??
なかなかハードモードですね。何度も往復をし、DXもくそもあったものじゃない。
どうなる?マイナ介護保険証シミュレーション
実際マイナ保険証が導入されたらどんな動きになるか、シミュレーションをしてみましょう。
これまで(一般的な例) | マイナ介護保険証の想定 | |
初回訪問 | 紙の介護保険証を確認。カメラ撮影もしくはスキャンで保険情報を保存。 | 本人同意と本人確認の上、マイナンバーカードをスマートフォンでスキャン。マイナンバーカードの暗証番号がわからずに右往左往。 |
保険情報の確認 | 認定区分や有効期間など、介護保険に関するすべての情報をその場で確認可能。本人の意向についての確認、アセスメントを行い、プラン原案作成につながる情報収集を行う。 | 自社の端末で確認しないと認定区分もわからないのでサービス提案もできないので、いったん事務所に戻ってから再訪問することを伝える。 |
支援事業所の届 | 介護度を確認し、その場で契約。居宅介護支援事業所として担当するための届け出の記入。 | そもそも介護か支援もわからないので、居宅介護支援の届出もできないので事務所の端末で確認するために出直し。 |
各事業所との共有 | それぞれの事業所で確認可能。ケアマネから保険証の画像を送付・送信して共有することもできる。 | それぞれの事業所で認証し、各自のシステムにログインして確認。もしくはケアプランデータ連携システム? |
なんて面倒なんだ。
考えただけでも恐ろしい。ケアマネの手間とシステム導入・利用費用などの課金を増やすだけがDXの目的か・・・?
介護情報基盤で保険情報の入手・解決するか
マイナンバーカード・介護保険証の一体化と同時に進んでいるのが介護情報基盤です。
下の図を見てみましょう。
右下、介護事業所が「被保険者証情報・要介護認定等情報・医療情報等の参照」できるようになっています。
つまり、ケアマネや介護サービス事業所が国の設置したプラットフォームから介護保険情報を引っ張り出せるということです。
最初っからそれでいいじゃん。
だったら、マイナンバーカードをスキャンすることもないし、情報入手できるならそれこそDX。私たちの求めていたDXですよ。
いちいち、更新の結果がいつごろ出るかなんて心配しなくていいし、そのために訪問する必要もないし。業務効率化にも大いに役立ちます。
でも。
新たな「介護情報基盤」、2026年4月開始目指す 厚労省方針 負担減へ情報連携を効率化:介護のニュースサイトJoint
なんで2026年度!!!
こっちが先だろう。どう考えても!!!!こっちを急いでよ。
業務効率化の足枷になっているのは国
きっと気付いている人は多いと思いますが、業務効率化の足かせになっているのは、いつも国です。
介護業界はDX化が遅れている。業務効率化が進まない。非効率だ。という勝手なイメージを植え付けようとしています。
でも、介護事業の効率化が進まない理由は、国・介護保険というシステムを通さなければいけないからです。
国が作ったそもそものシステムに問題があったら、それに振り回されて非効率にならざるをえません。書類を作成・提出するにしても、そのゴールが非効率なまま動かせなければ非効率を続けなければいけないのです。ローカルルールという名の無法地帯で、申請書類なども統一した規格を作ることができないので非効率極まりない。全国統一の基準・マニュアルを作ろうとしても、自分勝手な小役人の作った無駄なローカルルールが邪魔をする。
これをのさばらしていたら、絶対に業務効率化なんて進まないんです。
マイナ介護保険証でどうなる、ケアマネ
マイナ介護保険証が導入されることになると、おそらくシステムの導入が必須になります。補助金などは出るのかと思いますが、すでにマイナンバー対応が必要になっている医療機関の例を取って考えると、すべて費用が助成されるわけではないでしょう。
マイナ保険証で追い込まれる「かかりつけ医」…廃業が過去最多 「紙」が廃止なら保険診療を続けられない(東京新聞)
となると、マイナンバーカードの情報を入手するオンライン資格確認システムの導入に事業者の自己負担も発生することが予想されます。導入費用は数万円だとしても、月1~2万円のランニングコストも発生しているそうです。
端末に関しても新しいバージョンのマイポータルに対応していない端末などは使用できないため、事業所が対応端末を購入する場合もあるでしょう。
それ、無理でしょ。
月2000円のケアプランデータ連携システムだって導入できないのに・・・。
おそらく、医療機関と同じ対応で考えると、オンライン資格確認システム導入を無理強いされ、廃業する居宅介護支援事業所が続出するでしょう。
明るい未来なんて絶対に見えない。
当面は紙の保険証も併行することが決まっていますが、それがいつまで。居宅介護支援という仕事に未来がないなら、早く見切りをつけたいと考えているケアマネもたくさんいるはず。
もっと業界は真剣にこの問題を考えた方がいい。特に無反応で沈黙する日本介護支援専門員協会(いや、期待していないけれど)。
マイナンバーカードと介護保険証の一体化。果たしてどんな結末が待っているのでしょうか。
あ、もちろんですけど、マイナンバーカード取得はケアマネが支援しろなんて話も出ていましたが、そりゃ無理ですよ。
写真の撮影、暗証番号の登録、どれだけ時間がかかるか。無賃労働をやってくれる都合のいい存在だと思われてしまっているケアマネ。さすがにこれは怒った方がいい。