まず最初に自分の立場から言うと、介護事業者に特化したホームページ制作業です。この事実は先にお伝えしておかなきゃいけないなと思うのですが、その上で言いたい。どうしても言いたい。それは今回決定した厚生労働省の補正予算。今回はこの補正予算について言いたいことをわかりやすく解説しながらお伝えしたいと思います。
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訪問介護対象の補正予算が決定。ホームページ制作・改修に30万円
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本題です。もうすでにご覧になっている方も多いかもしれません。
厚労省、訪問介護事業所のホームページ開設・改修に補助 1事業所30万円https://t.co/Yq7AnGOO1Z#介護 #ケアマネ
— Joint (@Joint_kaigo) February 18, 2025
訪問介護等サービス提供体制確保支援事業実施要綱
1 目的
本事業は、人材不足が喫緊の課題である訪問介護等(訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護をいう。以下同じ)サービスについて、人材確保体制の構築による安心して働き続けられる環境整備に向けた取組や事業所の経営改善に向けた取組を、地域の特性や事業所規模等に応じてきめ細かく支援することで、訪問介護等サービスの担い手の確保及び経営の安定化を図り、地域における必要な在宅介護サービスの提供体制を確保することを目的とする。
(略)
3 対象事業所
訪問介護事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所及び夜間対応型訪問介護事業所(以下「事業所」という。)とする。
4 事業内容
実施主体は、次に掲げる事業を実施することができるものとする。なお、本事業を委託により実施する場合は、実施する事業の内容について、受託事業者と十分な協議を行うこと。
2)経営改善支援事業
実施主体は、事業所における経営基盤の強化や経営状況の改善等に資するため、以下に掲げる経費を対象に支援を行う。
エ 介護人材・利用者確保のための広報活動に関する支援
事業所が介護人材や利用者の確保のために行うホームページの開設・改修に係る経費や広報宣材(リーフレット、チラシ等)の作成・印刷等の広報に要する経費を対象とする。
5 補助基準額
本事業の補助対象となる事業所ごとの補助額は、4の(1)及び(2)に掲げるそれぞれの事業内容ごとに、実支出額と次に定める補助基準額を比較して少ない方の額とする。
エ 介護人材・利用者確保のための広報活動に関する支援
1事業所当たり 30 万円
という内容です。
雑にかいつまんで言うと、以下の内容です。
訪問介護の人材不足が危機的状況だからいろいろ補助金のメニュー作ってみたぜ。ホームページとかリーフレット・チラシも人材確保に役立つから1事業所あたり30万円出しまっせ。
なぜこのような唐突過ぎる政策が生まれたのか、という部分から解説していきます。
訪問介護の現在置かれている状況
まさかの介護報酬マイナス改定
訪問介護事業所はいま、介護保険制度開始以降最大の苦境に立たされています。
介護事業者の休廃業 去年は最多600件余 訪問介護が7割以上
去年、介護事業者が休業や廃業などした件数は600件余りと、調査を開始して以降、最も多かったことが信用調査会社のまとめで分かりました。中でも訪問介護の事業者が全体の7割以上を占めています。
正直、どこの事業所も潤っているとはいいがたい状況だと思います。
物価高によるコスト上昇、介護人材不足など、特に資金力の弱い小規模事業所は本当に厳しい苦境にあります。それだけでなく、訪問介護に関しては2024年の介護報酬改定で基本報酬を削減されるという仕打ちを受けています。地域包括ケアシステムで利用者の在宅生活の基礎を支えるはずの訪問介護がまさかの報酬削減。
先に紹介した訪問介護の休廃業の急増も、この介護報酬改定の影響を大いに受けていることは間違いありません。
超党派での議論の末、訪問介護の支援策に
訪問介護のサービス事業所が失われた地域も少なくありません。この危機的な状況に野党も反発。先の衆議院議員選挙でも訪問介護の報酬引き上げなどを公約に掲げる政党もありました。
超党派で緊急での介護報酬のマイナス改定の帳消しや補助金の上乗せを支援策として提案されていました。
訪問介護の緊急支援法案、立憲と国民が共同で国会に提出https://t.co/dtZJaSF45U#介護 #ケアマネ
— Joint (@Joint_kaigo) January 29, 2025
このような流れから、厚生労働省の補正予算で今回の支援策が打ち出されたという経緯になります。
別の見方をすれば「今回のが支援策だから。予算つけたわよ。だから、報酬引き上げなんてしませんよ」というのが厚生労働省の回答だとも受け取れます。
果たしてこの支援策は訪問介護事業所を救えるのでしょうか。
訪問介護事業所にとってホームページの効果とは
ホームページは訪問介護人材採用に効果がある
最初にお伝えした通り、自分は介護事業者専門のホームページ制作業です。なので当然、今回の補正予算に嬉しいと感じる部分もあります。それは、ホームページの持つ価値を認めてもらえたということです。
訪問介護事業所の人材採用にホームページが役立つ、だから予算をつける。この決定に関しては、ホームページの価値を認めてもらえたという意味で嬉しいというのが間違いなく本音です。もちろん自分のような末端の末端ではなく、行政も巻き込んで活躍されているブランケットさんとか、採用支援に強いウェルノバさんとか、面識はないけどそういった方々の力なんだなと本当に思います。
ただ、ホームページが採用に効果があるという表現は正しくなくて、制作者側が事業所のことをちゃんと理解し、それを形として表現し、伝えたい相手に向けて発信されたホームページは効果があるんです。ただあるだけのホームページで意味があるかと言ったら、自分はそうは思わないです。
だから、「ちゃんと」作ったホームページであれば30万円以上の価値を間違いなく証明できると思っています。
だけど、今回の厚生労働省の制作は愚策と言っていいです。
訪問介護のホームページ制作費補助金の問題点3つ
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今回の補助金の問題点を3つ挙げます。
1.そもそも「訪問介護をしたい」という人が増えないと意味がない
ホームページ制作費用をかけてホームページを作ったとしても、ホームページは潜在層に働きかける力は弱いです。どんなにSEO対策をしたとしても、「訪問介護」というキーワードで検索しない人にホームページでリーチすることは難しいです。
訪問介護をしたいと考えている求職者がたくさんいるんだったら効果があります。仕事を探している人を呼び込めばいいのです。でも、現在の訪問介護の求人倍率、知ってますか?15.53倍です。1.553倍じゃないですよ。15.53倍ですよ。15.5事業所が求人を出して一人の求職者(ホームヘルパー志望者)を取り合う状況です。
これでは誰もいない荒野で客引きをするようなものです。
まずは訪問介護の仕事をしたいと思える人を増やさなきゃいけないです。そのために必要なのはイメージアップでもなく、付け焼刃の一時金でもなく、安心して暮らしていけるだけの賃金や待遇ですよ。働いたらちゃんと昇給出来てキャリアを構築できる環境ですよ。それがないのに働いてくれる人は増えませんよ。
いいホームページを作れば訪問介護をしたい人が地面から湧き出してくるとでも思っているのでしょうか。もうその時点で愚策です。
2.特定の組織への利益供与や補助金ビジネスの温床になる
真面目に介護業界のホームページを作っている業者ならいいです。でも、そういった業者ばかりじゃないでしょ。おそらく、この補助金を目当てに補助金ビジネスを狙ったハイエナのような連中が群がることは目に見えています。
「補助金でホームページ作りませんか?」「タダでホームページ出来ますよ!」「実はもう作っちゃったんです。でも補助金だから~、申請しておくから書類にサインしてもらえます?」みたいな団体からの電話やFAXが飛んでくるんです。迷惑極まりない。
なんとなくそれっぽいテンプレートで、介護サービス情報公表のデータを埋め込んで、訪問介護っぽい写真素材を入れておいて、はい30万円。なんて、そんなの許せます?
補助金の運用は都道府県に任されるのですが、都道府県で運用する力はないので、関連団体や外郭団体が実質的には運用します。当然のように中抜きが発生します。そして、ホームページを作る業者の要件なんかも制限されるんでしょう。うちのような個人事業は相手にされないのかもしれないですが。
もう補助金ビジネスの闇です。そんなの結局予算の無駄遣いにしかならないでしょう。
3.ホームページは短期的な問題解決策ではない
すでにホームページの効果については説明しましたが、でも、これは短期的に物事を解決する手段だとは思っていません。もちろん短期的な効果もあるとは思いますが、ホームページの価値は長期的な視点に立つことが必要です。
まず制作するのにも時間がかかります。最短3週間程度で立ち上げた経験もありますが、事業所からの意向を確認して、デザインを固めて、機能をすり合わせて、テストして、デモを見てもらって、修正して、独自ドメインとったらメールの設定とかテストとか、当然時間がかかります。
一番時間がかかる要因は、事業所側に余裕がないからです。忙しい業務の合間を縫ってチェックしたり、事業所の画像を引っ張り出してきたり写真を撮ったり、文章を考えたり、個人情報保護方針のファイルを探してきたり、なんだかんだやることもあります。だから、お願いしたら明日の朝には出来上がってるなんてものではありません。
そして、ホームページを新設してから、検索エンジンに評価されるまでにも時間がかかります。前はすぐに上位に上がることもありましたが、今は検索エンジン側も慎重なので、時間をかけてサイトの内容や閲覧者の行動を確認しながら評価していくので、3ヶ月くらい検索順位が上がらないことなんて結構あります。
検索エンジンに評価されて、流入が増えて、採用などにつながるというサイクルになるので、そう考えると短期的な効果というのはあまり期待ができません。
訪問介護事業所が困っているのは、今の問題なんです。いま現在怒っている危機をどうするかという問題なんです。この温度差が感じられない時点で愚策だと言いたい。
ということで、今回の訪問介護事業所へのホームページ制作費補助が愚策だと感じる理由を書きました。
とにかく、今必要な支援なのかといったら、もっと緊急的に予算を振り向けなきゃいけない部分があるだろうと言いたいです。
訪問介護をやりたい人を増やすことなんて一朝一夕でできるわけじゃないんだから、せめていま訪問介護の仕事をしている人が、訪問介護の世界からいなくなってしまわないように待遇を改善できるようにしてほしいし、その人たちが働く事業所の経営が維持できるように予算をつけて欲しい。切にお願いしたい。
それが多くの訪問介護事業所の声だと思っています。
補助金を使ったホームページ制作の相談も受けます
まだ補助金の具体的な運用について決まっていないので何とも言えませんが、補助金で作りたいという相談ももちろん受けます。ちゃんと作ります。補助金だから適当に作るなんてことしません。だって事業所の資産だと思いますし、それは事業所の未来につながるホームページだから。
補助金を活用しやすくするプランなども考えていきますので、固まり次第アナウンスしていきます。キャッシュバックとか、訪問介護で使うための端末のセットとかのプランができたらいいなと思いますが、きっと難しいんだろうな、と。
先日リリースしましたが、ウェルコネクトでは訪問介護事業者向けのキャンペーンを行っています。金額見ていただければわかると思いますが、制作費に30万円かかりません。
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キャンペーン打ち出したはいいけれど、今回の補助金うんぬんで、補助金使えるか確認したいからって、キャンペーンの反応が薄くなるんだろうなというのは正直な話(苦笑)。
無料相談なども受け付けていますので、是非お気軽にご相談ください。