4月1日から介護保険の報酬改定が行われます(医療系サービスなど一部は6月から)。すでに介護保険の報酬改定には取り組まれている事業所も多いと思うのですが、今回は診療報酬改定について紹介します。特に、訪問看護事業所は介護保険だけでなく、医療保険の指定を受けており、医療訪問看護の算定時には診療報酬のルールの下でサービスを提供しています。
そこで、訪問看護事業所には特に知っておいてほしい、今回の診療報酬改定内容。ホームページの掲載内容に関する項目もありますので、ぜひチェックしておきましょう。
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訪問看護医療DX情報活用加算
マイナ保険証・医療DX推進のための加算
訪問看護の診療報酬には「訪問看護医療DX情報活用加算」という加算が追加されました。
厚生労働省の資料から紹介します。
第1 基本的な考え方
居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが導入されることを踏まえ、初回訪問時等に利用者の診療情報・薬剤情報を取得・活用して、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行い、質の高い医療を提供した場合について、新たな評価を行う。
第2 具体的な内容
指定訪問看護ステーションにおいて、居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムを通じて利用者の診療情報を取得し、当該情報を活用して質の高い医療を提供することに係る評価を新設する。
第584回中央社会保険医療協議会総会【総ー1】個別改定項目について|厚生労働省
どういうものかというと、オンライン資格確認を行った利用者に関して、この加算が算定できるというものです。かみ砕いていうと、利用者(患者)のマイナンバーカードを訪問看護スタッフがリーダー等で読み取って、情報を取得・活用した場合に算定できるものです。いわゆる「マイナ保険証」というものですね。
オンライン資格確認を行い、電子処方箋システムや電子カルテ情報共有サービスと連携し、医療DXを推進することが大きなテーマとなっています。
※令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】:厚生労働省資料
患者が医療保険をマイナンバーカードに紐づけていることも条件になりますので、ちょっとハードルが高いのですが、マイナンバーカードの普及を目指す一環で、加算が創設されたと言えます。よくある手法ですが、加算というエサを用意することで国が描く方向性に(無理やり)誘導していくパターンですね。
すぐに一般的に普及することはないかもしれませんが、いずれは拡大していくと思われますので、準備していくことは必要です。
訪問看護だけでなく、病院・歯科医院・薬局などにも同じようにオンライン資格確認の加算が創設されましたので、足並みをそろえていく流れになっていくでしょう。
詳細は厚生労働省の解説動画もご確認ください。
算定要件に記載された「ウェブサイトへの掲示」
算定要件などもすでに公表されていますので、こちらも厚生労働省の資料から紹介します。
[対象患者]
訪問看護管理療養費を算定する者
[算定要件]
別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)が、健康保険法第3条第 13 項の規定による電子資格確認により、利用者の診療情報を取得等した上で指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合は、訪問看護医療 DX 情報活用加算として、月1回に限り、50 円を所定額に加算する。
[施設基準]
(1)訪問看護療養費及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(平成4年厚生省令第5号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っていること。
(2)健康保険法第3条第 13 項に規定する電子資格確認を行う体制を有していること。
(3)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い訪問看護を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して訪問看護を行うことについて、当該訪問看護ステーションの見やすい場所に掲示していること。
(4)(3)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。
[経過措置]
令和7年5月 31 日までの間に限り、(4)に該当するものとみなす。
第584回中央社会保険医療協議会総会【総ー1】個別改定項目について|厚生労働省
後半、気になる内容ありませんでしたか?
原則として、ウェブサイトに掲載していること。
が条件とされています。
経過措置という名の猶予期間はあるのですが、ウェブサイトへの記載が求められています。つまり、この要件を満たさなければ、加算を算定できないということです。
え?DXとか、オンライン資格確認とか、言われても、何をどう掲載すればいいの・・・。
オンライン資格確認、ホームページへの記載ポイント
では、何を書けばいいのか。
「医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い訪問看護を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して訪問看護を行う」ことについて記載しろというけれど、そのまま書いていいの?それだけでいいの?と迷うところですね。
まだ具体的なQ&Aが出ていないのですが、やはりご利用者やご家族に安心してサービスを受けてもらうことが大事なので、書き方にも注意が必要です。
特に重要と思われるポイントを3つ押さえておきたいと思います。
1.なぜオンライン資格確認をするのか
まずオンライン資格確認をする目的を明確にすることが必要です。
「いや。そりゃ加算がもらえるからでしょ」
って答える正直者。あなたは正しい。
でも、そこは利用者・患者にとってどのような利益があるかを示しておくことが必要です。
厚生労働省の文言通り、「質の高い看護を提供するため」という一言でもいいと思います。でも、オンラインで資格確認したら看護の質って高くなるの?っていうストレートな疑問を持たれる場合もありますので、「関係医療機関との情報連携を促進することにより、質の高い看護を提供するため」などを明記することもいいでしょう。
2.情報の保護
これは個人情報の取り扱いについて契約時に説明していると思うので、そこまで細かく記載する必要はないと思います。ただ、マイナ保険証についてはトラブルが話題になる事も多かったため、懸念を持たれている方も多いのが実情。
なので、
個人情報保護方針に基づき適正な管理を行います
という一文を掲載するだけでも安心感はだいぶ違うと思います。
もっと丁寧に書くのであれば、
個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等の関係法令を遵守し、個人情報保護方針に基づいた適正な管理を行い、ご利用者様への看護サービスの提供以外の目的には使用いたしません。
とまで書くのがベストかもしれません。
3.同意取得型であること
これは書いておいた方がいいなと思うのが、訪問看護の資料では記載がなかったのですが、同意取得型であることを記載しておいた方がいいでしょう。
ホームページに書いてあるのを見て
「え?マイナンバーカード見せるの嫌なんだけど」
と、抵抗感を感じてしまう人はいるでしょう。また、同意取得であることが書いていなければ、マイナンバーカード提示が必須条件であると思われてしまいかねません。
あくまでマイナ保険証のデータ取得に同意された方のみ、オンライン資格確認を行うことは明記しておいた方がいいでしょう。看護サービス提供の入り口部分で信頼関係を損ねてしまっては、その後のサービス提供にも影響を残す可能性があります。
訪問看護医療DX情報活用加算、ホームページへの記載例
では、訪問看護医療DX情報活用加算算定のためのウェブサイト記載事項、記載例を提示します。
医療DX推進体制に関する説明事項
当事業所はより質の高い看護を目指し、医療DX推進体制を整えております。
健康保険情報と一体化したマイナンバーカードを通して、オンラインでの資格確認を行っています。取得した資格情報をもとに、電子処方箋システムや電子カルテ情報共有サービスとの情報連携を行い、医療情報を活用した訪問看護を提供します。
目的について:
オンライン資格確認をはじめとする医療DX推進を通して、関係医療機関との情報連携を促進し、質の高い看護を提供するため。
個人情報の取り扱いについて:
個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等の関係法令を遵守し、個人情報保護方針に基づいた適正な管理を行い、ご利用者様への看護サービスの提供以外の目的には使用いたしません。
資格情報の提供について:
資格情報の提供は患者様及び代理人の同意に基づいて行われます。同意なしにオンライン資格確認を行うことはございません。
令和6年6月1日
訪問看護ステーション○○
案として提示させていただきました。どうでしょうか。自由に使ってください。
診療報酬のQ&Aなどで情報が追記されましたら、こちらの内容を変更する場合もありますのでご了承ください。
ホームページを持っていない事業者は作らなくちゃいけないの?
ホームページを持っている事業者はこれをホームページ上に掲示しなければいけない、ということはわかりました。じゃあ、持っていない事業者はどうすればいいの?
え~と。ホームページ制作業者としては、
「ホームページ作れるように1年間の猶予期間があるんだから、今から作りましょう!私がお手伝いしますよ、( ̄ー ̄)ニヤリ」
としたいところなのですが、正直者なのでお伝えすると、ホームページのない事業者について
「自らの管理するウェブサイトを有しない保健医療機関は対象外」
と記載していますので、慌てて作ることはないですよ、ということが書いてあります。なので、急いでホームページ作らないと加算が取れなくなりますよ、とか、報酬算定できないですよ、とかっていう業者は詐欺ですので引っかからないようにしましょう。
じゃあ、ホームページ、最初から持っていなければいいんじゃん(ボソッ)。 という声が聞こえてきそうですが・・・。
やはり国が原則デジタルを打ち出している以上、今後もホームページは必要な場面が増えてくると思います。遅かれ早かれ採用などのためにもホームページが必要になる場面も増えると思いますので、ライトな相談・質問だけでも無料で受けておりますので、どうぞお気軽に。