この記事では、介護とICTをつなぐ専門資格、福祉情報技術コーディネーターについて紹介しています。
現在、福祉情報技術コーディネーターは認定試験を行っておりません。認定試験休止の発表を受けてこの記事を書いていますが、今でもこの投稿にアクセスいただいている方も多く、その後生まれた2つの介護とITに関する資格と比較しながら、支援技術のこれからについてもお話していきます。
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介護とICTをつなぐ専門資格、福祉情報技術コーディネーター
介護の関連資格というのは民間資格を含めると非常に多く、様々な資格や認定試験が生まれています。
介護職の多くは勤勉で学習意欲が高いことがこういった傾向に現れているのかもしれません。
そんな民間資格のうちのひとつに福祉情報技術コーディネーター認定試験があります。
これは、障害などのハンディキャップを抱えた人と、支援技術(アシスティブテクノロジー)を結び付けるというもので、
平成12年にアシスティブテクノロジー検定試験としてスタートし、
現在は福祉情報技術コーディネーター認定試験と名称変更していますが、
17回の試験が開催されてきました。
ちなみに、私自身も福祉情報技術コーディネーター1級資格を持っておりますが、資格取得までの道のりについてはこのブログにも掲載していますので、お時間のある方はどうぞ。
テクノロジーの進歩で、ハンディキャップを抱える人にとっての生活は大きく変わりました。
スマートフォンなどのデバイスの進化や普及、ウェブアクセシビリティの向上など、
大きな変化が起こる中で、この福祉情報技術コーディネーター認定試験の試験内容は取り残されてきた部分があります。
全日本情報学習振興協会からの突然の発表
そして、今回、試験を運営する一般財団法人全日本情報学習振興協会よりこのようなアナウンスがありました。
謹啓
福祉情報技術コーディネーター認定試験につきましては、平成12年のアシスティブテクノロジー検定試験としてスタートして以来、平成15年に福祉情報技術コーディネーター認定試験に名称変更を行い、約17年間に亘り支援技術に関する検定試験を継続開催して参りました。
しかしながら、昨今の情報化の急速な進展により、支援技術にも大きな変化が起きております。したがって、唯一の試験のベース教材となっている福祉情報技術コーディネーター対策テキストの内容についても現在の新技術に合わない点が多々発生してしまっていることも否めません。
出題内容につきましては、現在まで情報化を出来る限り反映させて適切な問題の作成に鋭意努力して参りましたが、将来に亘る試験の継続と有用性を考えた場合、問題内容と合わせて、試験名称の変更や新テキストの作成を含めて、抜本的に改革することが必要であるとの結論に至りました。
平成29年度以降の開催日程につきましても慎重に検討を重ねて参りましたが、平成29年2月12日(日)の第36回試験をもって休止し、本年度は開催しないこととなりました。
今後の支援技術に関する試験の開催計画と検討結果につきましては、追って本サイト上で発表させていただきます。
長年に亘る、関係者や受験生のご支援に心よりお礼申し上げるとともに、今後の受験をご希望される皆さまには、暫くお待ち下さるようお願い申し上げます。
果たして今後、この試験が再開することがあるのか。
もしくはまったく新しいカリキュラム・新しい認定試験として生まれ変わるのか。
私個人としては1級取得者という位置づけになりますが、この扱いがどうなるのかもちょっと心配です。
ただ、今後、ますますニーズの高まるスキルだと思っておりますので、
ぜひこの試験の再開を期待しています。
情報などは私の運営している併設サイト「福祉情報技術コーディネーターになろう」でもお知らせしていきたいと思います。
追記:2022年、介護とICTはどうなったか
さて、現在2022年ですが、現在も福祉情報技術コーディネーター認定試験のページはそのまま更新されていません。そう、いまだに「休止中」のままです。
この資格が発足した当初は非常に新しい取り組みだったと思うのですが、非常に残念ですね。
ただ、その後介護とITを結ぶ資格などもいくつか生まれていますので、紹介します。
介護ITインストラクター
介護ITインストラクターは、介護福祉の業界で働いている人が社内でITシステムの導入や運用を行うことができ、業務を効率化することを目的とした資格です。
SNSやアプリの活用なども含め、施設在宅問わず介護業界の幅広い従事者を対象としています。
福祉情報技術コーディネーターが、障害者・高齢者がIT技術を活用するのをサポートすることを目的としているのに比べ、介護ITインストラクターは介護事業者の事業運営に生かすための資格という印象があります。
合同会社AUTOCAREが勉強会などを主催していますので、興味のある方はぜひ。
スマート介護士
スマート介護士は介護施設で介護ロボットや先進技術を導入するための専門家という位置づけです。現在、介護施設の多くは人手不足で業務の効率化が求められています。
介護ロボットを導入し、施設内でロボットの運用をサポートすることで、業務改善することがスマート介護士の役割です。
主催しているのはサンタフェ総合研究所。東京都大田区で特養などの施設を運営する社会福祉法人善光会が立ち上げた団体となります。
この資格は介護施設の従事者が対象で、介護ロボットの導入・運用が中心となっている資格なので、福祉情報技術コーディネーターとはまた少し意味合いが違う資格になります。
オンライン試験を開催していますので、興味のある方はリンクからどうぞ。
介護×IT資格を比べてみた
ふたつの資格と福祉情報技術コーディネーターの資格を簡単に比べると、このような感じになります。
資格名 | 介護ITインストラクター | スマート介護士 | 福祉情報技術コーディネーター |
対象者 | 介護福祉事業所に勤務する人 | 介護施設に勤務する人 | 高齢者・障害者の支援に携わる人 |
内容 | ITを通した介護事業の業務効率化 | 介護ロボットの導入・運用 | 高齢者・障害者のIT利用促進 |
認定試験 | 「介護ITオンライン勉強会」に10回の参加、3回以上の発表 | オンライン試験 | 休止中 |
主催 | 合同会社AUTOCARE | サンタフェ総合研究所 | 全日本情報学習振興会 |
ごく簡単にまとめてみました。
それぞれに対象や領域が異なります。
福祉情報技術コーディネーターが復活しない理由
福祉情報技術コーディネーターが復活しない理由は、いわゆる支援技術(アシスティブテクノロジー)が急激に進歩したからです。
例えば、高齢者が日常生活の中で普通にスマートフォンを活用するようになりました。これは機器やテクノロジーが進化し、ユーザビリティが向上。さらに、音声入力などの技術も大幅に進歩したことによります。
専門家のサポートがなくても、多くの高齢者・障害者がスマートフォン一台でITとつながり、利便性の高い生活を手に入れることができるようになりました。そのため、アシスティブテクノロジーの専門性が必要とされる場面自体が少なくなったものと思われます。
スマートフォンと電動車いすを接続して音声入力で希望する目的地に到達するという時代です。
いま振り返ってみるとすごい時代になったなと思います。
ただ、まだまだ高齢者・障害者がICTにつながることができないというケースは多く、専門的なサポートが必要とされる方も多くいらっしゃいます。
支援技術のさらなる発展に期待していきたいと思います。
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