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ケアプラン有料化は本当に正しいことか?
介護報酬の時期改正の目玉は居宅介護支援に自己負担を導入するかどうかだと言われています。
そんなん、目玉でも何でもない。
ケアプラン有料化でケアマネジメントの質は向上するか
ケアプランを有料化すれば、ケアマネと利用者との間にいい緊張関係が生まれて、ケアマネも責任感をもってケアプラン作成ができる。
なんて言う人がいます。
馬鹿か?
責任感を持って仕事ができないのは、そもそもケアマネうんぬんじゃなくて社会人としての問題でしょ。
ケアマネがそもそも責任感をもって仕事をしていないという言われ方をしているのに、どうして怒るケアマネがいないのかまったく意味が分からない。
当のケアマネでもこの自己負担に賛成している人がいるというが、本当にどういった認識なのか理解に苦しむ。自分たちが馬鹿にされていることに気が付いていないのか。
そもそもおかしい介護報酬の居宅介護支援費
そもそも介護報酬における居宅介護支援費の仕組み自体がおかしい。
介護保険サービスに結び付かなければ居宅介護支援費は請求できない。
ケアプランを作ってもサービスの利用がなければ報酬を受け取ることができません。
居宅介護支援費だけでは介護報酬は請求できないのです。
いくら相談対応しても、いくら足を運んでも、給付管理が発生しなければ報酬は発生しないのです。ケアマネの仕事そのものに報酬が発生するわけではなく、他のサービス利用と結びつかないと報酬すら発生しないのがケアマネの仕事なのです。つまり、「ケアプランが有料になる」ではなく、「給付管理が有料になる」のが正解ですね。
担当件数で基準件数を超過すると逓減制が発動。報酬70%カットも。
担当基準件数が定められていて、ケアマネ一人あたり39件までは通常の介護報酬で居宅介護支援費Ⅰとして請求できますが、40件目からは報酬50%カットです。
ツイッターでも呟いてみましたが。
居宅介護支援自己負担導入の件。
— 介護福祉のウェブ制作ウェルコネクト (@welconnect) 2019年2月27日
現行制度のまま自己負担導入したら、基準件数オーバーしている事業所で契約すれば自己負担は半額で利用できる可能性があるのか。
契約年月日が古い方から数えて40番目以降の利用者から半額(減算というが厳密には減算ではない)になるので、
— 介護福祉のウェブ制作ウェルコネクト (@welconnect) 2019年2月27日
「いまなら半額で利用できますよ」とか、
「契約順が繰り上がって39番目になるので来月から自己負担は倍になります」とかありうるわけ。
同一サービス同一価格じゃなきゃいかんでしょ。
これですね。
— 介護福祉のウェブ制作ウェルコネクト (@welconnect) 2019年2月27日
特定事業所の料金が高いのはそれだけ質の高いサービスを提供しているということで料金に違いが出るのはわからなくもないのですが(自己負担を考えると料金の差がでかすぎますけど)、逓減制については契約日のみの違いで料金が変わってしまうわけですからね。#ケアマネ #自己負担 #半額 pic.twitter.com/JoXxoBHxGA
契約日順に40件目を超えたら自己負担は半額になります。60件目からは30%。
担当件数が基準件数を超過している事業所を探してケアマネと契約すればなんと最大で自己負担30%オフ。利用者さん殺到するんじゃないの?まともなケアマネジメントできるかどうかなんて知ったことじゃないけど。
ケアプランの質が悪くてもとりあえずサービス調整と給付管理してくれれば安い方がいいに決まっていると考える人が大多数になるでしょうから、こういった事業所のニーズも高まるでしょう。
特定事業所加算がでかすぎる
特定事業所は最大でひと月500単位も介護報酬の上乗せが得られます。
特定事業所加算は最大で500単位。これはでかいですよね。
国としては質の高いケアマネジメントをと推奨している特定事業所加算ですが、自己負担導入したらひと月500円以上上乗せになります。1000円ちょっとの居宅介護支援費という基本料金に500円の割増分。これはどう考えてもバランスがおかしいですよね。
訪問看護の緊急体制加算とはまたちょっと意味合いが違いますから、本当に自己負担を増やしてまで特定事業所にお願いしたいという層がどれだけいるか。
ケアマネジメントはソーシャルワークではないのか
そもそもケアマネジメントはソーシャルワークではないのか。
ケアマネにはソーシャルワーカーとしての自覚はないのか。
地域のマネジメントだのなんだの言われてきて、地域の社会資源との連携とか、地域ケア会議への参加とか、無報酬の業務であっても、これはソーシャルワーカーとして地域のためにすべきことという自覚があってやってきたわけでしょう。今までやってきたことに何の疑問も持たないのか。ケアマネ。
ソーシャルワークで料金を取るなんて、カウンセリングじゃないんだから。
自己負担が発生すればサービスの質は上がるのか?
上がらないでしょう。ってか上がるわけないですよ。
介護保険サービスだって、自己負担が3割の利用者と2割の利用者と1割の利用者いるわけです。
満足度調査でもやってみたらいいですよ。
3割自己負担しているからって、質のいいサービスが受けられると思いますか?
デイサービス利用者に対して、この方は3割負担だからおかずを一品増やしましょうとか、他の人よりも丁寧に接しましょうとか、そんなことあると思います?ないでしょ。
生活保護で自己負担がない人のサービスは自己負担発生している人に対するサービスと比べて劣ったサービスを受けていますか?違うでしょ?
そんなことわかりきっているじゃないですか。
介護保険導入時だってそうですよ。
自己負担が発生するようになったからってサービスの質なんて上がりませんでしたよ。むしろいろんな事業者が参入してサービスの質なんて崩壊状態でしたけどね。
こんな誰が見たって明らかなデマにきちんと反論できないケアマネ協会が業界団体を名乗っていることも情けない。
根強いケアマネに対しての不信感
そして、思うんですけど、この議論。実は敵は味方であるはずの介護業界にある気がします。
- ケアマネばっかり全額介護報酬からもらっててずるい。
- ケアマネはいつも偉そうにしていて腹が立つ。
- ケアマネの方がいい給料もらっているんでしょ。
在宅ケアマネに対するやっかみや嫉妬も混じった目が介護業界全体から向けられているんじゃないでしょうか。
ケアプラン有料化になったらサービス利用控えが起きやすくなりますし、利用者の確保だって難しくなります。自己負担100円の杖のために1000円の居宅介護支援を利用したくないという人もいるでしょうね。セルフプランの利用者が増えたら介護報酬とりっぱぐれるリスクをサービス事業所は抱え続けなければいけなくなります。
居宅介護支援費の自己負担導入で首を絞めるのはサービス事業所自身でもあるわけです。
もう少し介護業界にいる人は全体像を見て考えるべきなんじゃないでしょうか。