タイトルそのままです。
いろいろなところから怒られるかもしれないですが、思っていることを書いておこうと思います。
これだけ介護サービスの需要があって、人材不足が深刻なのに、介護職員の給与が増えていかない。
人件費を削っている分、介護サービス事業を運営する法人・事業所は儲けているかというと、事業所にも余裕はなく、事業所の閉鎖も増えています。
こんな悪循環が続いている理由はいったいどこにあるのでしょうか。
その原因の一つとして、介護の人材紹介会社の問題があると考えています。
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人が集まらない介護現場。
2025年に不足する介護職員数は34万人!
とにかく介護現場には人が集まらない。
どれだけ求人広告を出しても、ハローワークに募集を出しても、介護職員が確保できない。常勤換算ぎりぎりで運営している小規模な事業所が多い。
これは非常に深刻な問題です。
政府は、2025年には34万人の介護職員が足りなくなるという予測をしています。
34万人の不足。この数字だけでもとんでもない数字です。
ただ、この見込みは甘々な数字で、もっと大きな数字に代わる可能性が高いと考えています。
介護職員は現在190万人。2025年に必要とされる介護職員の数は245万人と言われています。
ん?おかしいと思いませんか?
245万人-190万人で不足する介護職員の数は55万人なんじゃないかと、そう思うのが普通じゃないですか。
この資料ではこのままいけば介護職員は2025年までに211万人まで増えるという見込みをしているのです。生産年齢人口が減少しているのに、介護職員が予測通りに増える保証はどこにもありません。
介護福祉士養成校も定員割れする学校・施設が増えています。介護福祉士の受験者数も回復する兆しを見せることはありません。
期待されているのがEPAの外国人介護職ですが、この5年間で6万人増やすという目標を掲げています。外国人介護職を受け入れる事業所も増え、外国籍の介護スタッフも増えてきていますが、まだまだ達成までは遠く、目論見はおそらく外れることになるでしょう。
ひょっとしたら、2025年になったときに、介護職員の数は予想の211万人すら下回っているという可能性はかなり高いと考えています。
若い人たちは介護という仕事に魅力を感じなくなり、就職先に介護を選ぶ人も少なくなっています。
介護職の処遇改善などを進めていっても、10月からスタートした介護職員等特定処遇改善加算のようなベテランへの待遇改善を目的とした施策では、介護職員数を増やすことは難しいでしょう。
介護サービス事業所は事業所を存続させるため、介護職員の確保に必死です。数少ない人材の確保を目指す人材サバイバル時代です。
介護の人材紹介会社
人材派遣と人材紹介
人手不足の事業者の頼みの綱としているもののひとつに、人材派遣会社があります。
ただ、派遣会社に支払う費用が高く、継続的に利用することが事業所の大きな負担となってしまうことや、単発での利用でスタッフの教育・研修が行えないことから、積極的に派遣を依頼するという事業所は限られています。訪問入浴の看護師などの資格職は派遣を活用することが多い印象です。
そして、もうひとつが介護の人材紹介会社です。
介護の人材紹介会社
人材紹介会社は登録している人材を求人募集している会社に紹介して、雇用契約が締結されればその紹介手数料を受け取るという仕組みで利益を上げています。
事業所のFAX番号宛に登録している人材のプロフィールを流して、反応があった事業所に売り込みをかけます。
介護業界の人材紹介会社は急速に増えています。
介護職の場合は先にお伝えした通り、人材不足のため、超売り手市場となっています。少しでも条件のいい職場を選ぶために、転職を繰り返す介護職員も少なくありません。
そして、介護職員が自分に合った就職先を探すために活用するのが人材紹介会社です。
このように、転職を斡旋し、雇用が成立すれば、介護サービス事業者は人材紹介会社に手数料(マージン)を支払います。
その紹介料として支払う金額が非常に大きく、問題とされています。
支払われる手数料の目安は、採用が成立した介護職員の年収の20~30%と言われています。看護師やケアマネなどの資格職の場合は30%を超えることもあるようです。
上の表にあるように、セカンドラボ株式会社が行った調査では、人材紹介会社に支払った手数料の金額をみると、昨年4月の時点では15~20%が多かった紹介手数料は、今年7月では20%~25%に上昇しています。手数料30%以上のケースは以前は2.8%しかなかったのですが、今年7月の時点では14.5%にまで上昇しています。
人材紹介会社に事業者が支払うコストはこの一年余りで大幅に上昇していることがわかります。
人材紹介会社が受け取っているのは、介護職員が汗水を流して、腰痛などの労働災害のリスクを抱えながら必死で介護サービスを提供し、それでようやく得た事業所への報酬です。
それなのに、仕事を探している介護職員を紹介するだけで、その職員の年収の30%が人材紹介会社の懐に入っているのです。
介護サービス事業者は人材紹介会社に支払う手数料という名の採用コストが増大しているため、介護職員の処遇改善ができないという状態に陥っているのです。
つまり、人材紹介会社の存在が、介護事業所の採用コストを吊り上げ、介護職員の待遇改善の足かせになっているということが言えます。
サービス事業者としては介護職の待遇を改善し、少しでも長く働いてもらいたいという気持ちがあるのは当然です。しかし、待遇の改善にまわす余裕がなくなっているのです。
悪質なサクラ転職、おとり求人
さらに、サクラ転職という言葉があり、次々と人材紹介での転職を繰り返しながら、紹介手数料を事業所から人材紹介会社に流す存在もあるようです。
さらに、おとり求人といって、本当は就職する気もない登録者のプロフィールをFAXで一斉送信で流し、反応があったら無理やり別の登録者を勧めようとするということもあるようです。
このような悪質な手を使う人材紹介会社もあるようです。そんな紹介会社に、この国の介護の未来や、介護職の地位向上などを願う気持ちはこれっぽっちもありません。
・・・もう気が付いている人もいるかもしれません。
介護サービス事業所の本当の敵は介護の人材紹介会社なのではないでしょうか。
そして、事業所にとってだけではなく、介護職員にとってもそれは敵でしかないのです。
なぜ介護職員は人材紹介会社を利用するのか
ではそんな人材紹介会社を利用するのはなぜか。いくつかの理由が考えられます。
1.転職祝い金・転職支給金というエサ
介護職員が人材紹介会社から転職支給金や転職祝い金を支給するという制度を採用している紹介会社もあります。
転職後の想定年収が500万円だったら最大20万円の転職支給金がもらえる、なんて謳っている業者があります。想定年収が500万円だったとしたら、年収の30%の手数料をとっていると仮定した場合、人材紹介会社が受け取る報酬は150万円です。そのうち20万円くらい転職した人にくれてやったところで痛くもないでしょう。
むしろ、転職祝い金や転職支給金といった餌をまいておくことで介護人材を確保しておく方がはるかにメリットが大きいのですから。餌まきの効果で転職を希望する介護職員が集まっているのです。
※記事掲載時は就職お祝い金20万円支給を広告として大きく打ち出していました。現在は批判が集まり、就職お祝い金をうたうバナーは削除されているようです(2023年6月追記)
2.インターネット上でとにかく強いPR力
そして、介護の人材紹介会社の強みはインターネット上に現れます。
グーグルなどの検索エンジンで「介護 求人 (地域名)」といったキーワード検索をかけるとしましょう。上位を占めているのは人材紹介会社のサイトがほとんどです。もちろん、検索画面にも人材紹介会社の広告が多数出稿されています。
例えば、「横浜市 特別養護老人ホーム 求人」で検索してみましょう。
検索結果に表示されるのは人材紹介会社のサイトがずらっと並び、ときどきインディードやハローワークのサイト。そして、介護サービスを提供する事業者の自社ホームページが表示されるのが3ページ目、32番目の検索結果になっていました。
少なくとも「大都市圏の地域名キーワード」と「求人」と「介護に関するサービス名」などで検索をして、1ページ目に事業者のサイトが表示されることはほとんどないと思います。それは大手企業であるニチイやSOMPOケアやツクイやベネッセのような拠点数も提供サービスも豊富で丁寧にコンテンツ作りをしている事業所だとしても、それに勝つことはできません。
人材紹介サイトで優位に立っているのはサイト内における圧倒的なコンテンツの情報量です。
介護の人材紹介会社は検索エンジン最適化(SEO)に積極的にお金を投資しています。
ライターを雇ったり、クラウドソーシングなどで介護に関するキーワードを中心にした文章を書かせて寄せ集めたりして、コンテンツの量を増やし、検索エンジンの評価を獲得しています。
介護業界についての記事、面接についてのノウハウ、履歴書や職務経歴の書き方など、転職に関する情報コンテンツを山のように掲載しています。
SEOで優位に立つことで、求職者のアクセスを獲得でき、介護人材を確保することに成功しているのです。
転職祝い金という罠や、徹底したSEO対策により、人材紹介業者は介護人材の確保に成功しているのです。
この流れを変えなければいけない。
人材紹介会社に支払うお金を介護職員のために
個人的に言いたいのは、人材紹介会社に支払うお金を、そっくりそのまま介護職員に支払うことができたら、みんながハッピーになるんじゃないの?ということです。
想定年収350万円で介護人材を採用したい。人材紹介会社に支払うのが想定年収の30%分としたら105万円。それをそっくりそのまま介護職員に還元したらいいじゃない。みんなハッピーになると思いません?
人材紹介会社を経由しないで雇用契約した人には想定年収の30%分の支度金支給。30%はちょっとでかすぎるのであれば20%分でもいいでしょうし、10%だっていいと思うんですよ。
みんなでそうやっていけば、介護の人材紹介会社をこの介護の人材市場から追い出していけるんじゃないでしょうか。
かくいう自分も人材紹介を使ったことが
あります。自分も人材紹介を使ったこと。
ケアマネとして転職したんですけど、別に人材紹介会社なんて何をするでもなかったです。一度会って、あとは電話とメールくらいです。
条件を入力して、それに該当する職場がいくつかリストアップされて、どんなところかの情報は頂いて、面接の日程調整は人材紹介さんでやってくれたけど、あとは別に何をするでもなかったというか、何もしないですよ、ぶっちゃけ。それで自分の年収の30%分が支払われるわけですから、ひどいもんです。いくらとは言えないですけど。。。
楽して儲ける。今の介護業界の最大の勝ち組のひとつでしょうね、人材紹介。
なんでハローワークじゃダメなのか?
ハローワークでいいじゃない。
ハローワークって、失業してくたびれた中年が仕事探してため息をついているイメージがあるかもしれませんけど、介護人材側も豊富な情報から検索できて、採用側だってコストをかけないで募集ができるわけですから、こんないいことないじゃないですか。
ハローワーク万歳。
もっとハローワークをきれいでおしゃれにしましょうよ。図書館にスタバ作ってないでハローワークにスタバ作りましょうよ。
IT系のオフィスみたいな感じに、清潔感あってわくわくする感じのフロアにしましょうよ。
福祉人材センターを使おう
都道府県の社会福祉協議会では福祉人材センターを運営しています。
全国社会福祉協議会では福祉のお仕事というサイトで、求職者登録もできますし、事業者側も求人情報も掲載できます。
でも、福祉人材センターって使ったことないっていう人が多いと思います。
求人情報の数もかなり少ないです。
もっとPRするなり、ハローワークと連動するなり、やりようがないんでしょうかね。
公的な介護人材の就職・転職の受け皿があるわけですから、もっと活用していきましょう。
ウェブ屋の責任も痛感
介護事業所がSEOで優位に立てない
かくいう自分も、ウェブ屋としての責任も痛感しています。
介護事業者のウェブサイトがSEOで勝てないんです。
お問い合わせメールフォームから採用につながることがあれば、人材紹介会社にお金を払わなくていいんです。
ウェブサイトを見て電話しました、っていう人がいれば人材紹介会社にお金を払わなくてもいいんです。
払わなくていいお金を払わせてしまっているのは、ウェブ屋の力の無さもひとつの原因と思っています。
ウェブ屋にもできることはあります。
事業所の良さをもっと引き出せないか。
見る人に興味を持ってもらえるコンテンツにできないか。
その積み重ねで、サイトを見た人がそこで働く自分をイメージでき、直接お問い合わせにつながっていくんじゃないでしょうか。
差別化戦略で魅力的なウェブサイトに
ウェブサイトを通して差別化していくことが大切です。
きれいで見栄えのいいサイトだから人が集まる、というわけではなく、伝えたい情報を伝えることができるサイトに人が集まります。差別化し、自分たちの職場がどんな事業所なのかを伝えることに意味があります。
ウェブサイトが、みなさんが日々事業所で行っている取り組みを表現できる場でなかったら何のためのものなのでしょうか。
事業所さんの協力をいただかなければできないことなので、ウェブサイトでこんなことをしたい、こんなことをアピールしたい、って思いがあればいつでもご相談ください。
SNSを主戦場に
そして、ひとつの突破口として有効なのはSNSを主戦場に移すことです。
もちろん、ウェブサイトに求人の情報や求人に関するコンテンツは掲載しておきつつ、SNS上で発信をしていくことです。SNSでバズりましょう。
「うちの事業所はこんな職場です、よかったら見に来てみませんか」ってツイッターで投げかけてみましょう。
「僕らはこんな楽しいプログラムを提供してます、一緒に利用者さんと楽しみませんか」ってyoutubeで配信してみましょう。
「みんなでこんな作品作りをしてます、楽しいですよ」ってインスタグラムでフィードしてみましょう。
ダイレクトに採用に結びけようと呼びかけなくても、興味のある人がリアクションをしてくれたら、そこからいつか採用につながるかもしれない。
ゼロコストでできることじゃないですか。チャレンジしてみましょう、SNS。
ウェブとの連動ももちろん大歓迎です!
まとめ
・介護職員は人材難。人材を確保するために人材紹介を利用する施設が増えている。
・人材紹介の紹介手数料は紹介する人材の年収の20~30%分。採用コストは高騰している。
・採用コストが上昇するため、介護職員の待遇改善は後回しに。
・検索エンジン対策で優位に立つ人材紹介会社に人が集まる。
・サービス事業者にできることは、差別化を図ることと、SNSでバズること。
追記(2023年6月4日)
人材紹介会社の高額な手数料や就職お祝い金にいよいよメスが入りそうです。
財務省審議会が人材紹介会社の規制を行うべきと提言しています。
この規制が確実に行われれば、人材採用の流れは大きく変わると思われます。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
“介護サービス事業者の本当の敵は人材紹介会社なんじゃないかっていう話。” への1件のフィードバック