以前にも紹介しました、介護職員の給与毎月9,000円上乗せに関しての続報です。
世間では、「期待して損した」「こんなことだろうと思った」という落胆の声が広がっています。
介護業界が期待した岸田政権の目玉政策。
介護職が期待外れと感じたのはいったいなぜなのでしょうか。
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毎月9,000円のベースアップではない
当初、介護職にはベースアップで一人一律毎月9,000円という情報が飛び交いました。
しかし、厚生労働省が作成したリーフレットに目を通すと・・・。
なんと・・・
「一律で月額9,000円の引き上げを行うものではありません」
って、9,000円引き上げるって言ったじゃない・・・。
・・・ということで、9,000円アップしない可能性もあるわけです。
しかも、この給与引き上げはベースアップだけとは限りません。
なんでこんな複雑な仕組みになってしまうのでしょうか。
この賃上げ制度、介護職員処遇改善支援補助金の問題点を3つ紹介します。
処遇改善支援補助金、3つの問題点
1.煩雑な申請手続き
1つ目の問題点は申請の手続きの煩雑さです。
今回の介護職員賃上げ、「介護職員処遇改善支援補助金」という名称で、令和4年2月から9月までの期間限定の補助金になります。
賃上げの計画を立てて、実際に賃上げを実施する事業所に補助金として「介護職員処遇改善支援補助金」が支給されます。
2月までに賃上げの計画を立てて申請、最低でも3月には賃上げをしていなければ(2月分もまとめて3月分と一緒に一時金として支給することが認められています)、2月からの分はこの補助金の対象になりません。
処遇改善加算や特定処遇改善加算ですら大変だったのに・・・、さらにまた計画・申請・報告といった書類作成の手間が増えてしまうわけです。
さらに、事業所によっては就業規則や給与規定、求人の情報なども作成し直さなければいけないのです。
これ、面倒だから申請やめるわ・・・という事業所が増えてもまったく不思議ではありません。
介護職員処遇改善支援補助金、1つ目の問題点は手続きが煩雑であることです。
2.補助金の額が足りず、事業者の持ち出しになってしまう可能性
2つ目の問題点は、補助金の金額についてです。
この補助金は給与を増やした分をまるまる職員に支給するのではなく、介護報酬に各サービスごとに定められた以下の交付率を掛けた金額を事業所に交付するというものです。
介護報酬の処遇改善加算と考え方としては同じです。
まず、事業所は先に賃上げをしなければいけないので、職員には計画に基づいて上乗せした給与を支払わなければいけません。
でも、お金が入ってくるのは後。
そして、そのお金は毎月一定額でもなく、職員の人数に応じて支払われるのでもなく、事業所の売り上げに乗じた金額が支払われる仕組みなのです。
ということは、売り上げの小さい事業所は、補助金として交付される金額が職員の処遇改善に充てる金額よりも小さくなる可能性もありますよね。。。
介護事業所は売上をがっつり減らしてしまうようなイベントがいくらでも考えられます
- 利用者が次々入院して売り上げ減
- コロナで事業所を一時休止して売り上げ減
- そもそも2月なんて稼働日数が少ないので売り上げ減じゃん
ということで、補助金の金額がいきなり大きく減ることがあるのです。
つまり、事業所の売り上げが少なくなれば、補助金の金額は足りなくなり、賃上げ分を事業所が持ち出しで支払わなければいけなくなります。
この補助金があるために赤字になってしまう・場合によっては経営的なリスクを負わなければいけないということです。
だったら、ベースアップで9,000円支給なんてリスクが高すぎるし、そもそも申請しない方がいいんじゃない、って考えてもおかしくはないでしょう。
介護職員処遇改善支援補助金、2つ目の問題点は事業所に入ってくる補助金の金額が足りない場合があることです。
3.10月からは加算に切り替わること
この補助金、期間限定で2月から9月までと決まっています。
10月以降は処遇改善加算・特定処遇改善加算と同様、第三の処遇改善加算として介護報酬の中に組み込まれます。
え、あんなにドヤ顔で「分配」「分配」って言ってたのに、利用者の自己負担を増やして財源としてむしり取り、それを介護職員に分配するって・・・どういうこと。
なんだよ、結局財源は介護保険になるのかよ。
利用者の自己負担が増えるとなると、当然、利用者側からの不満の声も出ます。
利用者からは「私たちの負担を増やすおかげでお給料9,000円も増えるんでしょ」という、刺すような冷たい視線が・・・。
そして、ケアマネからは「いいよね、9,000円も給料増えて。私たちには一円も増えないのに面倒な加算の計算が上乗せになるし、利用者に説明するのも大変なんですけど」というリアルな不満が・・・。
もちろん、加算にしたら加算にしたで申請や実績報告が必要になり、また煩雑な手続きが必要になります。
介護職員処遇改善支援補助金、3つの問題点を紹介しました。
介護職員の給与は本当に9,000円増えるのか?
3つの問題点を紹介した通り、多くの課題を残す介護職員処遇改善支援補助金。
事業所としては頑張っている職員に毎月9,000円ベースアップ支給したい。
でも、経営的なリスクを負いたくない。
ということで介護職員処遇改善支援補助金申請を躊躇する事業者があったとしても不思議ではありません。
補助額の2/3以上はベースアップ等の引き上げにしなければいけないというルールがあるため、ベースアップと一時金をミックスする事業所も多くなるでしょう。
また、特別陳情届出書を提出した上で、現行の賃金水準を低下させ、賃上げをするという事業所もあるかもしれません。
いずれにしろ、賃上げは当初思い描いていたようなものにはならない可能性があります。
いずれにしても、2月にはスタートを切る介護職員処遇改善支援補助金。
申請する事業者様は、ホームページの求人情報の欄に補助金支給予定金額も記載しておきましょう!
追記:令和4年10月からはベースアップ等支援加算に姿を変えてスタート
予告通りですが、10月から加算として介護報酬に組み込まれることになりました。
これについて、別記事でまとめていますのでご確認ください。
利用者さんの自己負担も増えますし、事業所には説明しなければいけない義務もありますので、準備は早めにしていきたいですね。
下の記事にも書きましたが、10月分からこの加算を算定するためには8月中に都道府県に申請書を提出しなければいけないので、まだ手を付けていない事業所さんはお急ぎください!