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介護労働実態調査、ケアマネの平均年齢は?
毎年行われている介護労働安定センターによる介護労働実態調査。
この調査により、介護労働者の待遇や賃金、保有資格などの実態が見えてきます。事業所に送付し、事業所が回答するものと、従事者が回答し、返送します。
項目が多くて面倒なので、毎度回答率が低い調査となっています。
今回の調査、事業所調査では調査対象のうちおよそ半数の51.8%回答が得られていますが、労働者調査では39.0%とかなり回答率が少なかったのが残念なところです。
気になるデータをひとつだけ紹介したいと思っています。
それは、介護保険制度の要と言われる介護支援専門員「ケアマネジャー」の平均年齢です。
ケアマネの平均年齢は53.3歳!
なんと、ケアマネの平均年齢は53.3歳です。平均ですよ、平均。
これは、介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書からのデータですが、年齢階層のグラフがあるので紹介します
介護保険サービスの種別ごとに年齢データが掲載されています。
一番下にあるのが居宅介護支援、つまり在宅のケアマネです。
在宅ケアマネとして就業している方のうち、60歳以上が25.1%。ついに4分の1を越えました。あなたが介護の認定を受けてケアマネをお願いしたとすると、4分の1の確率で60歳以上のケアマネが担当になるということです。
さらに恐ろしいのは、30歳未満のケアマネは0.2%、30歳以上35歳未満のケアマネは0.4%、35歳以上40歳未満のケアマネは5.3%。
40歳未満のケアマネは6%にも満たないのです。
もちろん、受験資格として実務経験5年が必要になりますので、若い人が少なくなるのはわからないでもないのですが、だとしてもあまりにも年齢構成がいびつすぎます。
介護職の待遇改善が進んでいるものの、ケアマネの待遇改善は進まず、介護職とケアマネの賃金格差はほぼなくなっているのが現状です。むしろ夜勤回数などによってはケアマネよりも給与が高い介護職などいくらでも見かけるようになりました。
介護職員はケアマネ資格取得やケアマネ転職に魅力を感じなくなり、介護職として現場にとどまることが増えているのです。
ちなみに、調査のサンプル数が少ないことから、データの信ぴょう性を疑う方もいるかもしれませんので補足します。このデータに関しては、事業所の従業者を対象にした調査ですが、事業所に行った調査でもケアマネの平均年齢は52.7歳とほぼ変わりません。
この平均年齢は実態を反映したデータと考えていいと思います(肌感覚的にも!)。
ケアマネ交流会やケアマネ更新研修会場はいつか老人会に
ケアマネが集まる地域のケアマネ交流会や、ケアマネの更新研修の会場に行くと、本当に現実を思い知らされます。「まるで老人会」と冗談で言う人もいますが、そろそろ冗談ではなくなりそうです。
70歳以上でも頑張っているケアマネさんもたくさんいます。本当に頭が下がります。
ただ、この状況で、高齢化がさらに進行する2040年を迎えたとき、ケアマネとして働いている人は何人いるのでしょうか。
介護保険からケアマネはいなくなるのではないか?
このままいけば、介護保険制度からケアマネがいなくなるのではないかと、以前別ブログで紹介したことがあります。
高齢化するケアマネ。いま、ケアマネの平均年齢は48歳。
このままケアマネ試験合格者が減少していけば、現役世代のケアマネ人口はあっという間に少なくなっていくでしょう。
ケアマネは介護保険制度の絶滅危惧種になるかもしれません。
もしくは、専門職としてではなく、定年退職後のボランティアのような形で相談を行う役割になっていくのかもしれません。シルバーカーを押しながら、利用者のもとに向かう高齢ケアマネ。同世代で昔はどうだったと話し合うような時代が来てもおかしくありません。
ケアマネの質の低下、ケアマネなんて介護を多少かじっていたら誰でもできるんじゃない?なんて方向に誘導していく可能性もあります。
もしくは重度の方だけが介護保険制度の対象となりケアマネが担当し、要支援や軽度(要支援・要介護1・2)は総合事業の対象となり、ボランティアケアマネ・なんちゃってケアマネが担当します、なんてこと。
以前だったら「ないない(笑)」と笑い飛ばせましたが、ありえなくもない未来ですね。
介護福祉ブログコミュニティ ヘルパータウン
この時から4年経過していますが、状況は変わらないどころか一層ひどくなっています。この時の調査から4年間の間に平均年齢が5歳も増えているのです。
4年間、人がそのまま入れ替わらず1年たったとしても平均年齢は1歳上がるだけです。若いケアマネ試験合格者がケアマネとして働き始め、ベテランケアマネが一定数退職して、となれば平均年齢は前年度水準で維持されるはずです。
世代の新陳代謝が生まれていれば、平均年齢は大きく変わらないはずです。それなのに、ケアマネの平均年齢が毎年1歳以上のペースで増えているのです。まさに高齢化待ったなし。
平均年齢が急激に上がっているのは、
- 若い世代がまったく入ってきていないのか、
- 若い世代のケアマネが転職でケアマネの仕事を離れていっているのか、
- 現場介護職を退いた超ベテランがケアマネに転職することが多かったか、
- 定年退職相当のケアマネがいても後任がいなくて辞めるにやめられないのか、
以上のような事情を推測することができますが、どの理由も当てはまりそうな気がします。
いずれしても、ケアマネが絶滅に近づいていることは間違いなさそうです。
厚生労働省や日本介護支援専門員協会がこの現状に、どの程度危機感を持っているかは知りませんが、ヤバすぎます。
四面楚歌のケアマネ
ケアマネの世代交代が進まないことで、一番懸念すべきことは、ベテランケアマネが経験や知識、人脈、さらにはいい意味での図太さ(メンタルの強さ)で乗り越えてきたケアマネジメントの蓄積が失われてしまうことです。
ケアマネジメントの質を向上しろと厚生労働省はこれまでしきりに強調してきました。ケアマネの質の低さを指摘し、公正中立ではないと指摘し、全額公費はおかしいと指摘し、ICTを活用していないと指摘し、目の敵にされてきたという現実があります。さらには、味方であるはずの業界団体からも見放されるなど、踏んだり蹴ったりです。
下のツイートは、老施協という介護施設の団体から、居宅介護支援費も自己負担を徴収すべきだと表明したことに関して発言したものです。
※その後、老施協はこの発言を撤回しています。
こんな状況では、ケアマネという仕事に誇りを持てる人がいなくなるのも当たり前です。
伝承されないケアマネジメント技術
そんな四方敵だらけの中を戦ってきたベテラン(高齢)ケアマネたち。
しかし、ケアマネの持っている俗人的な技術、ケアマネジメントの技術を標準化・言語化・マニュアル化することができないまま、多くのケアマネが引退を迎えようとしているのです。
これは大きな課題だと思います。
いいケアマネと悪いケアマネ。ケアマネが二極化するのには、いいケアマネの持っている技術を人に伝えることができないからです。
コミュニケーション能力や課題を整理する能力。これらは天性のものではなく、技術でどうにでもできることなのです。しかし、同時に人に指導することが難しいことなので、後進を育てることができないのです。
ケアマネジメント技術がブラックボックス化しているということが言えます。技術を後進に伝えることができず、ベテランケアマネが一線を退くとともに技術が葬られてしまうのです。
ベテランケアマネに対して、合理的ではない、俗人的、経験頼み、と批判することは簡単ですが、それでも、これまで介護保険の基礎を固め、地域のネットワークを構築してきたのです。その技術は地域にとっても大きな代えがたい財産なのです。
これから、一線級で働いているケアマネが高齢化し、大量退職する時代を迎えます。
世代交代しようにも引き継ぐ相手がいないという現状。果たして、ケアマネジメントの技術は次の世代に伝承されるのでしょうか。
10年後のケアマネジメントは
10年後、ケアマネジメントはどうなっているのでしょうか。
AIケアマネジメントの研究が進められています。疾患名や症状などを入力すると、事業所も含めた選択肢が出てきて、ケアプランが出来上がる。そんな未来も近いのかもしれません。
財務省や厚生労働省は、近いうちにケアマネジメント・ケアマネジャーはもう必要ないという世論を形成していこうとするのでしょう。
本当にそれが正しいケアマネジメントなのか?プランという紙ができて、事業所のサービスを利用することができれば、利用者の自立支援を目指していけるのか?利用者の尊厳は守れるのか?
言うまでもなく、ケアマネジメントは大きな岐路に立たされています。
それなのに、主任ケアマネ研修のお題は相変わらずの事例検討のオンパレード。やれやれ。
追記:現在、ケアマネ不足はさらに深刻に
ケアマネ不足の問題はさらに深刻化しています。ケアマネの受験資格を緩和すべきとかいう意見も出ていますが、ケアマネになりたい人がいないのですからそんなことで解決できるわけがない。
今いるケアマネの処遇を改善しなければ根本的な解決にはつながらないでしょう。
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