ケアプランデータ連携システムは「ゴミ」確定?多職種連携を妨げるものは?

ケアプランデータ連携システムが「ゴミ」と呼ばれる未来

みなさん、「ケアプランデータ連携システム」って知っていますか?

今まで「紙」媒体で受け渡ししていたケアプランをデータでやり取りしましょうよ。という話です。

ふーん。

というか、介護業界以外の方が見たら「え?」「いまさら?」「いま何時代よ?」と全力ツッコミされそうな話ですが、まだまだ介護業界はケアプランを紙で受け渡ししているのです

郵送・FAX・手渡し。介護サービスはいくら地域密着だからといって、そこにかかる時間や労働のロスは甚大です。

そんな状況を改善しようと、厚生労働省が取り組んでいるのがこの「ケアプランデータ連携システム」です。

ようやく全体像が見えてきた、このケアプランデータ連携システム。しかし、根本的に間違っている部分もあり、今回はその指摘も含めてお伝えしていきたいです。

最後までお付き合いください。

ケアプランデータ連携システムの概要

まずはケアプランデータ連携システムの概要をお伝えします。

ケアマネ・サービス事業所の情報連携

厚生労働省が発出する介護保険最新情報vol.1096で事業者向け案内が掲載されていますので、詳しく知りたい方はそちらを参照いただければと思います。ここでは大まかなポイントだけ紹介します。

ケアプランデータ連携システムを利用することで、「業務の効率化・コスト削減」が実現できるとしています。

その仕組みはこうです。

  1. ケアマネがケアマネ向けの介護ソフトでケアプランデータを作成する
  2. ケアマネが作成したケアプランデータをデータ連携システムにアップロードする
  3. サービス事業所がデータ連携システムにログインしてケアプランデータをダウンロードする
  4. サービス事業所の介護ソフトにケアプランデータを取り込む
  5. サービス事業所がサービス提供を行う
  6. サービス事業所が提供実績をデータ連携システムにアップロードする
  7. ケアマネがデータ連携システムにログインして実績データをダウンロードする
  8. ケアマネが介護ソフトに取り込み、給付管理データを作成し、国保連に伝送する

このように、事業所間の情報連携を厚生労働省が立ち上げるデータ連携システムを通して行いましょう!という内容です。

これまで事業所からの実績データをもらったら、ケアマネはひとつひとつ時間をチェックし、スケジュール変更があれば手直しをし、実績と計画の数字が合わなければ確認をするという、果てしなく地味な作業を行っていたのですが、そんな苦役とも解放されます。

サービス事業所も、実地指導が入るのにケアプランがない!と慌ててケアマネにお願いをすることなく、システムにプランを取りに行くだけで済みます。

なんでそもそもこういったシステムがなかったのか不思議でしょうがありません。

医療機関との連携もデータ連携システムで

ケアマネ・サービス事業所間の連携だけでなく、医療機関とのデータ連携に関してもこのシステムを通して行うことがすでに明らかになっています。

入院時・退院時の情報連携や訪問看護指示書などもこのシステムを通して行われることになっています。

こちらも介護保険最新情報で掲載されていましたので、ご参照ください。

これまで、入院時に送る患者情報は、ファックスやメール、手渡しなど、病院ごとに異なる方法で提出していたのですが、それもデータ連携システムで統一されれば本当に楽になります。

データ連携システム、きっかけは現場の声

このデータ連携システムが生まれたのは、現場の声がきっかけでした。

※令和4年5月19日、岸田首相は都内の通所介護事業所を視察

し、介護現場の職員と意見交換を行いました。その後の記者会

で、「職員の負担軽減や介護サービスの質の向上のためにICTを

活用するという視点が大変重要」と強調し、事業所同士がケアプ

ランのやり取りをクラウド上で行う為の情報連携基盤である「

アプランデータ連携システム」を今年度中に整備すると説明しま

した。

介護保険最新情報vol.1096より

詳しくは首相官邸ホームページで確認することができます。

業務負担軽減を実現するために取り組むことや、今年度中にシステムを整備すると明言しています。

岸田総理が現場の声を聞いて初めて動いたみたいなことを言っていますが、こんなものデキレース以外の何物でもない。じゃなきゃ、今年度中などの目安を総理がつけられるわけがない。というか、この話以前からこの話はでてた。

人の話を聞く総理大臣」をアピールするためのデキレース感ありありなエピソードですが、とりあえずそんなことはどうでもいい。総理大臣がやるといった以上はやっていただきたい。やっていただきましょう。

というところでしたが、このデータ連携システム。とんでもない罠が待ち構えていました。

ケアプランデータ連携システムの罠

導入スケジュールなどもすでに提示されています。

ん?

有料

なんと有料です。しかも価格未定

ちょっと待て。

ICTで業務負担を軽減するんじゃなかったのか?

コスト削減に努めてくれるんじゃなかったのか?

ここまできて、また金をとるのか?厚生労働省。

俺らのシマで金を稼ごうってならショバ代いただこうか的な。ヤクザか。

ケアプランデータ連携システムの価格は?

そもそも有料って、どのくらいの金額なのか。気になる方も多いと思います。

厚生労働省の資料を見ると、こんなことも書いてあるんです。

このシステムを使えば、年間81万円もコスト削減できますよ。

へぇ~~~って、そんな馬鹿な!

年間81万円経費削減っていくらなんでも盛りすぎです。経費半分になってるじゃん!

今までケアマネ何してたの?って話になりますよね。

でも、ここまで話を盛るということは、ある程度高い金額を設定してくるんじゃないかと思っています。

少なくとも、人件費考慮しない分の金額として挙げた年間7万円程度の設定をしてくる可能性は十分考えられます。導入時には初期費用として電子証明書使用料とか、諸々請求されるような気もします。相当吹っ掛けられると思っていて間違いなさそうです。

いやいや、なんでこうなった?

加算をなくしてもいいから無料にできないのか?

データ連携システムの使用料をとるくらいだったら、入院時情報連携加算の加算をなくせばいいじゃん、とか思いますけどね。ケアマネとしては、常時ケアプランデータが見える状態にしておけば、入院先医療機関にFAXを送ることもなくなって、医療機関側が自分たちで連携システムにログインして情報を取りに行けばいいだけ。

だったら入院時情報連携加算はいらなくなって、介護報酬も医療費も削減できるんだから、システム利用料をまかなうこととかできそうな気もするのですが。

ケアプランデータ連携システムの未来

年間数万円でも出費が増えれば、利益の出にくい居宅介護支援などのサービス種別は導入を見送るでしょう情報連携の要となる肝心のケアマネがこのシステムを利用しないのであれば、データ連携など絵に描いた餅にしかなりません

結局、使う事業所数が限られ「だったら今まで通り紙でやっていくしかないよね」という話になると思いませんか?データ連携システムは使われないゴミになってしまうか、訪問看護と医療機関の指示書とサマリーの受け渡しツールになるしかないでしょう。

厚生労働省が多額の費用をかけて、でも利用料を請求したせいで使われなくなり、余計に財政を圧迫するだけのゴミシステムへと早変わり。

もしくは、導入してくれる事業所には加算算定しますよと無理くり加算をくっつけてさらに介護保険財政を圧迫する本末転倒状態になるとか・・・。

まずは使ってもらわれなくては意味がないですし、ケアマネも高齢の方が多いのでできるだけ導入ハードルを低くしなきゃ意味がないです。

意味がないというか、ただただ無駄でしかない。

地域包括ケアを実現する多職種連携の未来を、こんなところでゴミにしては絶対にいけません。

みなさんもそう思いませんか?

追記:介護事業所が負担するシステム利用料が発表

介護施設・サービス事業所・居宅介護支援事業所等が負担するシステム利用料金が発表されました。

システム利用料金は年間21,000円になるそうです。

無料だと思い込んでいた関係者も多く、失望や怒りの声も聞こえます。

医療機関ともシステムを通して連携する予定でしたが、医療機関も利用料金払うわけですよね。料金かかるなら導入しない、という医療機関は少なくとも増えるでしょうね。

もちろん、サービス事業所であっても、従来の方法を変える必要性を感じていない事業所も多ければ自己負担してまで導入しないでしょう。

まずはシステムを普及させることが最優先だと思うのですが、厚生労働省から見たら情報連携の重要さなんてそんなものなのでしょう。

追記:ケアプランデータ連携システム運用開始。そして・・・(2023.06.04)

ケアプランデータ連携システムが運用開始されましたが、残念ながらほとんどの事業所が導入していないという事実が明らかになりました。

導入した事業所からは次々と悲鳴が。

連携する相手のいない連携システムなどゴミ同然。想像していた以上の大爆死となりました。

最終的には加算などをつけて導入率を上げるのかもしれませんが、本末転倒というか、逆に新たに補助金や加算を設計・運用するためにかかる莫大なコストはだれが負担するのでしょう。

最初から無料にしてよーいドンで始める方がはるかにコストもかからないはずでしょうに。

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