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訪問看護ステーションはこの10年で2.29倍に
訪問看護ステーションの事業所数が凄い勢いで増えています。
2022年12月時点の厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査によると、現在の訪問看護事業所数は全国に13,554事業所。昨年の訪問看護事業所数は12,393ですので、実は一年間で1,161事業所も増えていることがわかります。
10年前の2012年の調査では訪問看護事業所は全国に5,900件しかありません。なんと訪問看護事業所数はここ10年で2.29倍に増えているんです。
参考に訪問介護事業所と比較して紹介します。
2012年 | 2021年 | 2022年 | 増加率 | |
訪問看護事業所数 | 6,047 | 12,393 | 13,554 | 2.29倍 |
訪問介護事業所数(参考) | 28,016 | 35,075 | 35,612 | 1.27倍 |
「訪問看護増えたよね~」と思っているケアマネさん。
地域・エリアに限定された話ではなく、全国的に訪問看護事業所が増えてきているのです。

こちらは厚生労働省の審議会に提出された訪問看護事業所の年次推移のデータです。病院や診療所が行う訪問看護は減り、訪問看護ステーションが増えていることがわかります。
それだけニーズが高まっているということの証明でもあり、また在宅をステージに活躍する看護師さんが増えていることの証明でもあります。

こちらは介護給付費等実態統計を基にした厚生労働省の審議会資料ですが、訪問看護サービスを利用している方も右肩上がりに、急速なペースで増えています。
看護師常勤換算2.5人の要件を満たす、という大きなハードルをクリアすれば、開業は比較的しやすいということもあって、訪問看護ステーションは今後も事業所数を増やしていく・・・のでしょうか。
開業した事業所のうちおよそ4割が一年で廃業・休止
しかし、いくらニーズが増えているとしても、これだけ急激に増えると事業所間の競争も激化します。
実は、開業したものの一年にも満たず廃業・休止している事業所が多いのです。
一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、令和3年度に開業した訪問看護ステーションは1,806件。このうち、一年間で廃業となったステーションが490件、休止となったステーションが242件あるということなのです。
開業 | 廃業 | 休止 | 継続 | |
事業所数 | 1,806 | 490 | 242 | 1,074 |
訪問看護ステーションを開業したとしても、一年間生き残れるのはおよそ6割。言い方を変えれば、訪問看護ステーションの1年生存率はわずか6割しかないということです。
いかに厳しい競争なのかはこういった状況からもうかがえます。
訪問看護ステーション立ち上げ時に陥りやすい失敗
訪問看護ステーションを立ち上げる際、次のような要因から廃業という結果を迎える事業所が少なくありません。
- 資金計画の甘さ
- 訪問看護ステーションは開業当初から十分な利用者を確保しにくく、看護師など人件費の固定コストが大きいのが特徴です。キャッシュフロー不足に陥り、訪問看護 ステーションの閉鎖に至るケースが多々あります。
- 地域ニーズと事業コンセプトのミスマッチ
- 地域の高齢化や在宅医療の需要を正しく把握しないまま立ち上げてしまうと、必要とされるサービスと提供するサービスにギャップが生じ、訪問看護の利用者が集まらず経営難に陥ります。
- 看護師採用と定着率の課題
- 訪問看護経験者の獲得競争は激しく、採用活動が難しいだけでなく、雇用してもすぐに離職されるリスクがあります。人材確保の見通しが甘いとサービス稼働が止まり、訪問看護ステーションの立ち上げ失敗に直結します。
- 専門家・行政との連携不足
- 行政手続きや制度理解、助成金・補助金の情報収集を怠ることで経営に必要なリソースを確保できず、資金繰りや運営体制が脆弱になります。これが原因で早期に廃業なってしまうことも。
- マーケティング・PR不足
- ケアマネージャーや病院との関係構築に力を入れなかったり、ホームページ・SNSの情報発信が不十分だと、利用者確保に大きく影響が出ます。結果として事業開始後に利用者が伸びず、やむなくステーションの閉鎖に至る例も珍しくありません。
一年で廃業する訪問看護ステーションの事例

自分も訪問看護ステーションの立ち上げ時のホームページ制作を携わった案件がいくつかあります。
結果を残している事業所も多いですが、正直なところ、一年で廃業する事業所もありました。自分の力不足で事業所の持っている魅力を十分に引き出せなかった側面もあるかもしれません。もちろん、それは素直に受け入れていかなければいけない事実かもしれません。
しかし、競合の激戦区であることなどはともかく、計画性がないことや、採用するもののスタッフが定着しない、そもそも訪問看護を知らないなど、かなり無茶なスタートだったのではないかと感じるケースもありました。
ステーション立ち上げ後、管理者がすぐに退職し、新しい管理者に交代するものの長く続かず、事業所の体制も十分に固まらずに、別の法人に吸収合併されるという事例もありました。
特に看護師の定着率の低さは大きな課題です。人材紹介を経由でオープニングスタッフ募集の職場を渡り歩く看護師(管理者)もいますので、看護師の流動性はかなり高くなっています。
いかに魅力ある職場づくりをするかがますます重要になってきます。
看護師の採用が最大のポイント

訪問看護ステーションの生き残りを決めるのはやはり「人」です。
「経験ある優秀な人材」というよりもむしろ、「ステーションのビジョンを体現してくれる人材」であることが重要です。
訪問看護でのキャリアを持っている人材も増えていますので、即戦力がいるということはステーションにとっても大きな力になります。もちろんそれは重要ですが、全員が訪問看護経験者だったら成功するというわけではありません。
重要だと感じるのは、看護師の看護観と、ステーションの目指す訪問看護の形が合致しているか。これがとても重要な要素です。
目指すべき場所が遠くかけ離れていれば、事業所内で不和が生まれます。近隣に訪問看護ステーションは次々に生まれているので、納得がいかなければ、別の職場にすぐに移ってしまいます。最悪の場合には利用者や別のスタッフも連れて離職するという事例もあります。
訪問看護のキャリアがなくても、看護技術に拙さがあっても、それは経験で補っていくことができます。しかし、長年培ってきた看護観・価値観を変えていくことは容易なことではありません。
看護師ひとりの採用が訪問看護ステーションの存続に関わります。看護師の採用は競争も激しく困難なことから、採用のハードルを低く設定してしまう傾向がありますが、採用の失敗はそのままステーション運営の失敗につながってしまうのです。
成功する訪問看護ステーションは
開業・事業運営に成功する訪問看護ステーションに共通しているのは、「ステーションのビジョンに共感する人を集める」ことができていることです。
これが徹底できている訪問看護ステーションの多くは成功しています。
ビジョンに共感して集まり、同じ看護観(もしくは近い看護観)を持っているスタッフが揃っている訪問看護ステーションであれば、同じ場所を目指していくことができます。高い山のてっぺんでも、互いに助け合うことで目標を実現することができます。
ステーションのビジョンを言語化し、表現することがその第一歩。
- どんなスタンスで利用者と関わっていきたいのか。
- 利用者や家族の想いとリスクを天秤にかけたときにどうとらえるのか。
そして、ビジョンを表現する場所がホームページであり、ツイッターなどのソーシャルメディアです。
訪問看護ステーション閉鎖を避けるための具体的対策
ここまで紹介した事例や傾向を踏まえ、訪問看護ステーションを閉鎖や廃業の危機から守り、地域で信頼を勝ち得るための具体的な取り組みを紹介します。
- 経営計画と収支シミュレーションの徹底
- 1年目だけでなく2〜3年後までの資金繰りを想定し、複数パターンのシミュレーションを行うことで、不測の事態にも対応できる余力を確保します。
- 地域ニーズのリサーチとサービス展開の工夫
- 在宅医療やリハビリを必要とする対象者がどのくらいいるのか、連携可能な病院・在宅療養支援診療所などがどのくらいあるのか、そして同じ地域の中に特徴が重なる競合訪問看護ステーションがどのくらいあるのか。地域の実情をよくリサーチした上で、専門的サービスを提供することにより訪問看護ステーション開業の成功へ導くことが可能です。
- 人材採用・育成の戦略的アプローチ
- 求人媒体やSNS、看護師の口コミネットワークなど複数チャネルを活用します。面接段階からビジョンと看護観のすり合わせを行い、ミスマッチを防ぐことが定着率向上につながります。
- ブランディングと情報発信
- ホームページやSNSで「どんなステーションを目指すか」を具体的に発信しましょう。医療介護専門サイトへの掲載や、実績・事例の紹介など、わかりやすいPRは利用者獲得と人材確保に効果的です。
- リーダー育成とチーム運営の強化
- 管理者や主任看護師などリーダー層を中心に、スタッフ間のコミュニケーションの場を定期的に設けます。悩みの共有や課題解決のスピードが上がり、離職率の低減につながります。
まとめ:ビジョンと計画性こそが訪問看護ステーション生き残りの鍵
訪問看護ステーションはニーズが高まる一方で訪問看護の廃業率が依然として高く、1年以内で4割が廃業・休止に至る厳しい業界です。しかし、明確なビジョンと綿密な事業計画を持ち、看護師の採用・育成を戦略的に行い、地域に根ざしたサービスを提供すれば成功へ近づくことができます。
- ステーションのビジョンを明確化しよう
- 経営計画と資金繰りのシミュレーションを怠らない
- マーケティングと採用で認知度と人材を確保
訪問看護ステーションの閉鎖や廃業を防ぎ、安定した事業運営を実現するためには、これらのポイントを押さえることが不可欠です。今後ますます競争が激しくなる訪問看護業界で生き残るため、ぜひ自社の課題と照らし合わせて取り組んでみてください。
訪問看護ステーションのホームページ制作に関しては、実績豊富なウェルコネクトにぜひご相談を(新規法人立ち上げ1年以内のクライアント様に関しては割引もありますので是非ご活用ください)。
