【締切迫る】介護事業者の新たな義務「経営情報の報告」とは?今やるべきことを解説

経営情報データベース、報告義務!締め切り迫る!

2024年度から始まった「介護サービス事業者経営情報データベース」制度により、介護事業者は毎年、国に対して経営情報を報告することが義務づけられました。
報告には「GビズIDプライム」の取得が必要で、初年度の提出期限は【2025年3月31日】です。

この記事では、新制度の概要と、事業者がいつまでに・どのような手順で報告すべきかを、キーワードである「経営情報」「データベース」「GビズID」を軸に、わかりやすく解説します。

この記事のコンテンツ

介護サービス事業者経営情報データベースシステムの概要と目的

2024年度から本格運用が始まった「介護サービス事業者経営情報データベース制度(以下、経営情報DB)」は、すべての介護サービス事業者に対して、毎年の経営情報の報告を義務づける新制度です。

経営情報データベース制度創設の背景

介護サービスの需要が年々増加する一方で、事業者の経営状況はサービス種別や地域によってばらつきが大きく、国や自治体が支援策を講じようとしても、正確な実態をつかむことが難しいという課題がありました。
こうした課題を受け、介護保険法の改正により、介護サービスの持続可能性を高めるために制度的に経営データを把握する仕組みとして、この経営情報DB制度が創設されました。

介護サービス事業者経営情報データベースの概要

事業者は毎事業年度終了後、収益や費用の内訳、職員の職種別人員数などの経営情報を厚生労働省の専用システムを通じて報告します。
報告には「GビズIDプライム」のアカウントが必要で、システムにログインして直接入力するか、CSVファイルを使って一括提出します。

提出された情報は、厚労省が属性ごと(サービス種別や法人規模など)に集計・分析し、業界全体の傾向として公表されます。
事業所名や具体的な金額・内容がそのまま公開されることはありません


報告内容の内訳

報告内容は主に以下の3分野で構成されています:

分野内容(代表的な項目)
① 経営情報収益・費用の内訳、利益の状況など
② 職員情報職種別の常勤換算人数、男女別の人数
③ 給与情報(任意)職種別の平均給与額、年間賞与額、手当の有無など

※給与情報は任意項目ですが、将来的な制度設計に活用されるため、可能な限り提出が推奨されています


制度の意義と目的(事業者側のメリット)

この制度の最大の目的は、「正確なデータに基づいた支援の設計」です。
国や自治体が、介護人材の処遇改善や経営支援、介護報酬の設定を行う際に、実態に即した判断ができるようになります。

また、事業者にとっても次のようなメリットがあります:

  • 自社の経営状況を数字で客観的に把握できる
  • 適正な報酬改定や支援策の恩恵を受けやすくなる
  • 今後、経営情報の公開が「信頼性の証」になる可能性がある

サービス情報公表制度との違い

既存の「サービス情報公表制度」では、財務諸表やサービス内容をPDFで提出し、都道府県を通じて一般向けに事業所ごと公開することが義務づけられています。
一方、経営情報DB制度は、国が把握・集計し、業界全体の統計として公表するという性格のものです。

項目経営情報DBサービス情報公表制度
所管厚生労働省各都道府県
提出内容経営・職員・給与情報財務諸表、サービスの概要など
提出方法オンライン(専用システム)オンラインまたは紙(都道府県により異なる)
公開範囲統計処理後に業界全体の傾向として公表事業所単位でそのまま一般公開
事業所名・数値の公開なしあり
目的国の支援・制度設計の基礎資料利用者・家族がサービス選択するための情報

「経営情報DB」は、事業者にとって“面倒な義務”ではありますが、肯定的な一面を見ると、これからの介護経営を支える基盤づくりの一部ともいえる制度となります。
特に、報酬改定や人材政策にも影響することから、正確な報告が将来の自社経営にも大きく関わってきます。これまでのような、まったく実態を反映されない介護報酬改定が行われることは少なくなるかもしれません。

あと、「こんな面倒なことをやるんだったら、事業所実態調査なくせよ」と言いたい(事業所実態調査の回収率が低いからこんなことになったんでしょうけれど)。

ちなみに、介護サービス情報公表制度でも新たに財務状況のわかる書類の報告が義務化されています。こちらは一般にも公開される資料となります。これを混同しないように注意しましょう。詳細はこちらの事業所向けリーフレットをご参照ください。

経営情報データベースへの報告が必要な介護事業者とは?

経営情報の報告で悩む介護事業者

経営情報データベース制度では、原則すべての介護サービス事業者が報告の対象となります。
ただし、特定の条件を満たす場合には、報告義務が免除されるケースもあります。

以下に、報告義務の有無をわかりやすく整理しました。


経営情報データベースへの報告が必要な事業者

  • 介護保険制度に基づく すべてのサービス種別(訪問介護・通所介護・施設入所・福祉用具など)
  • 指定を受けてから 1年以上経過している事業所
  • 年額の介護報酬収入が100万円を超えている 事業所
  • すでに廃止している事業所でも、該当年度に100万円以上の収入があった場合は報告対象

報告が不要となる例(免除対象)

場合内容
年間介護報酬収入が100万円以下実績の少ない事業所は対象外となる可能性があります。
指定から1年未満の事業所初年度の報告は不要(ただし次年度以降は対象)
居宅療養管理指導・介護予防支援のみの事業所制度上の報告義務はありません。
災害や重大な理由で報告が困難な場合所管の都道府県に相談の上、免除される場合があります。

※「みなし指定(医療機関内の事業所)」も基本的に報告対象です。ただし、医療と介護の区分が困難な場合は、医療分も含めて報告できます。


報告単位は「事業所」?「法人」?

原則として、事業所(施設)単位での報告が求められています。
ただし、会計を法人単位でまとめているなどの事情がある場合は、法人単位での一括報告も可能です。

報告単位具体例
事業所単位会計が事業所ごとに分かれている場合は、各拠点からそれぞれ報告
法人単位すべての会計処理を法人一括で行っている場合は、まとめて報告も可能

このように、自社が「報告対象」かどうかは、サービス種別・収入規模・運営形態によって異なります。
まずは自社の状況を確認し、早めに準備を進めておきましょう。特に締め切りが近い事業所は余裕がありませんのでお急ぎください!詳細はこちらのリンクから再確認をお願いします。

介護サービス事業者経営情報データベースシステム

経営情報の報告期限とスケジュールを正しく押さえよう

経営情報データベースへの報告は、「いつまでに提出するか」が非常に重要です。
期限を過ぎた場合、法令違反とみなされ、都道府県からの指導や処分の対象になる可能性もあるため、しっかりと把握しておきましょう。


初年度(2024年度)の報告期限

2024年度は制度開始初年度として、特別な期限設定が設けられています。

会計年度の終了日報告期限
2024年3月31日~2024年12月31日2025年3月31日(月)まで

例:2024年4月~2024年9月決算の法人も、提出期限は同じく2025年3月末です。


2025年度以降の通常スケジュール

2025年度以降は、次のように「会計年度が終了した日から3か月以内」に報告するのが原則になります。

会計年度終了日報告期限
2025年3月31日2025年6月30日
2025年6月30日2025年9月30日
2025年12月31日2026年3月31日

締切が土日・祝日の場合は?

経営情報DBのシステムは、日付ベースで自動的に締切が設定されており、土日祝日も関係なく締切日として扱われます。
したがって、提出は余裕を持って前倒しで対応することをおすすめします。


報告の流れに合わせてスケジュールを組もう

タイミングやること
決算完了後決算書・職員数・給与情報などのデータを整理
GビズID確認アカウントが未取得なら、すぐに申請(最大2週間)
報告準備システムへの入力 or CSV作成
提出期限内にシステムから提出(余裕を持って実施)

報告期限を意識したスケジュール管理を行うことで、トラブルやペナルティを未然に防ぐことができます。
特に2025年3月31日までの初年度提出は、多くの事業者が対象となるため、今からの準備が非常に重要です。

報告スケジュール(厚生労働省ホームページより)

経営情報の報告に必要な4つのステップ

GビズIDの登録方法がわからず、看護師に教えてもらう経営者

経営情報データベースへの報告は、正しく準備すれば決して難しい作業ではありません。

ここでは、介護事業者が行うべき流れを4つのステップに分けて、わかりやすく解説します。


STEP1:GビズIDプライムを取得する

まず最初に必要なのが、「GビズIDプライム」のアカウントです。
経営情報の報告は、厚生労働省の専用システムにGビズIDプライムでログイン
して行います。

内容詳細
対象すべての法人(営利・非営利問わず)
費用無料
発行までの期間オンライン申請:即日~数日
郵送申請:1~2週間程度
注意点「エントリー」ではなく「プライム」が必要

▶ GビズID公式サイト:https://gbiz-id.go.jp/

GビズIDについてはこちらの記事も参考にしてください。


STEP2:報告に必要な情報を準備する

報告内容は、以下のような経営・人員・給与に関する情報です。

分類内容(代表例)
経営情報収益・費用の内訳、営業利益など
職員情報職種別の常勤換算人数、男女別人数など
給与情報(任意)職種別の平均給与、賞与額、手当の有無

※給与情報は任意項目ですが、可能な限りの提出が推奨されています。
※事業所単位または法人単位で集計しておきましょう。


STEP3:システムに入力 or CSVアップロードを準備する

経営情報の提出方法は、次のいずれかを選べます。

方法特徴
システムで直接入力初めての方におすすめ。画面の案内に沿って入力できます。
CSVファイルで一括登録会計ソフトを使っている場合はCSVでの出力・提出が可能。

→ お使いの会計ソフトが対応していない場合は、直接入力でOKです。
CSVのフォーマットやサンプルは厚労省サイトでダウンロード可能です。


STEP4:厚労省の「経営情報DB」にログインして提出する

GビズIDプライムでログイン後、必要な情報を入力またはアップロードし、「提出」ボタンを押すことで報告が完了します。
提出後は、確認メールや控えをダウンロード・保存しておきましょう。

え、わからなすぎてヤバい。と思った人。厚生労働省がyoutube動画をアップしていますので、これを見ながら手順を確認していきましょう。

よくある質問(FAQ)

制度のスタートにともない、多くの介護事業者から寄せられている疑問の中から、特に重要なポイントをQ&A形式でまとめました。


Q1. 報告しなかったらどうなるの?

A. 経営情報の報告は介護保険法に基づく義務です。
報告がなかった場合、まずは都道府県から報告の催促や指導がありますが、それでも報告しないまま放置すると、報告命令→指定取消などの行政処分につながる可能性があります。
報酬の減算などは現時点で明示されていませんが、将来的に導入される可能性もあります。


Q2. 提出した経営情報は、一般の人にも見られますか?

A. いいえ、事業所名や具体的な金額などの情報がそのまま公開されることはありません。
厚労省が属性(サービス種別・地域・規模など)ごとに統計的に集計し、分析データとしてのみ公表されます。


Q3. 財務諸表の提出と混同しそう…違いは?

A. 財務諸表(損益計算書・貸借対照表など)は**「サービス情報公表制度」に基づいて都道府県に提出し、一般公開されるものです。
一方、今回の
経営情報DBは厚生労働省向けの制度で、統計用データとして提出**します。
この2つの制度は目的も提出先も異なります。

項目経営情報DBサービス情報公表制度(財務諸表)
提出先厚生労働省都道府県
公開方法統計として公表(事業所名なし)一般公開(事業所名あり)
提出内容経営数値、職員数、給与(任意)財務諸表(PDF)

Q4. すでに廃止した事業所も報告対象ですか?

A. はい、報告対象の会計年度内に100万円を超える介護報酬収入があった場合、廃止済みであっても報告義務があります。


Q5. 登録ヘルパーや非常勤職員はどうカウントすればいい?

A. 「常勤換算」での報告が必要です。
登録ヘルパーの場合、**実働時間 ÷ (週の所定労働時間×4週)**で算出します。
小数点第2位を四捨五入し、0.1未満でも「0.1」として報告します。


Q6. GビズIDがまだありません。今からでも間に合いますか?

A. はい、間に合います。ただし、郵送申請の場合は2週間ほど時間がかかるため、早めの申請が必要です。GビズIDの取得方法はこのショート動画でも解説しています。オンラインであればすぐにできるのでぜひ。
すでに持っている場合はそのアカウントを使用できます。申請は無料です。

2024年度からスタートした経営情報データベース制度は、すべての介護サービス事業者にとって新たな義務です。
報告は「GビズIDプライム」でログインし、決算や職員情報を入力するだけ。準備さえできていれば、作業自体は難しくありません。

初年度の報告期限は【2025年3月31日(月)】。忘れていた人、いませんか?急ぎましょう!

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